健康影響

健康影響

電磁界はすぐに健康に悪い影響を与えるのでしょうか?
 おおよそ100キロヘルツ(kHz)以下の低い周波数の電磁界を浴びると、体内に電流が発生します。普通の生活環境で浴びる数百倍にあたるような強い電磁界を浴びた場合、その影響で神経や筋肉の活動が妨げられることがあります。さらに強い電磁界では、心臓の働きに影響を与えることがわかっています。

電磁界の健康への影響
世界保健機関(WHO)「環境保健クライテリア№69(磁界)」より

  また、おおよそ100キロヘルツ(kHz)以上の高い周波数の電磁界では、体温を上昇させる熱作用があります。
弱い電磁界でも長時間浴びていると、からだに蓄積されていくのでしょうか?
 一般に放射線と呼ばれているガンマ線、エックス線などの電磁波には蓄積作用がありますが、電力設備から発生する50ヘルツ(Hz)ないし60ヘルツ(Hz)の超低周波電磁界や通信に利用される高周波電磁界(電波)には蓄積作用はないと言われています。
⇒参考資料
☆ WHOファクトシート№182「物理的特性と生体への影響」(日本語訳)PDFファイルダウンロード
送電線の下の土地に長く住んでいると、健康に悪い影響が出てくるのでしょうか?
 送電線から発生する電磁界のうち、電界は健康に影響を与えないと考えられています。一方、磁界については、平均0.4マイクロテスラ(μT)以上浴び続けると、小児白血病の発生リスクが2倍に増加するという統計的な関係が示されています。しかし、生物学的な研究からは、悪影響を及ぼすような再現性のある結果は得られていません。
 これらのことから、世界保健機関(WHO)は、ファクトシート№322「超低周波電磁界へのばく露」の中で、「全体として小児白血病に関連する証拠は因果関係と見なせるほど強いものではない。その他の疾患への影響については、小児白血病についての証拠よりも更に弱い。」と述べています。
送電線の近くに家を買うのですが、大丈夫でしょうか?
 磁界の強さは、送電線や配電線の直下の地上高1mで最大20マイクロテスラ(μT)、変電所の敷地と一般の土地との境界部分で最大4マイクロテスラ(μT)程度であるため、磁界の短期的な影響については、国際非電離放射線防護員会(ICNIRP)ガイドラインの磁界ばく露制限値200マイクロテラス(μT)より小さいことから健康影響はないと言えます。
 一方、このような場所に長期間住むということで考えれば、長期的な影響の視点で考える必要があります。
 世界保健機関(WHO)が2007年6月に公表したファクトシート№322「超低周波の電界及び磁界へのばく露」によれば、複数の疫学研究のデータをプールした分析で、0.3~0.4マイクロテスラ(μT)を越える超低周波磁界の長期的ばく露により小児白血病が倍増するという一貫したパターンが示されています。しかし、調査対象者の偏り等の研究手法上の問題があること、生物物理学メカニズムがないこと、および大多数の動物研究で影響が示されていないことから、全体として因果関係と見なせるほど強いものではないと結論付けられています。
 また、小児白血病以外の小児がん、成人のがん、うつ病、自殺、心臓血管系疾患、生殖機能障害、発育異常、免疫学的変異、神経行動への影響、神経変性疾患についても数多く研究されていますが、いずれも磁界ばく露との因果関係を示す証拠は小児白血病よりも更に弱いと結論付けられています。
 これは、長期的なばく露による健康影響が完全に否定されたことを意味するわけではありませんが(科学の世界において、健康影響全くないことを証明することは理論的に不可能)、健康影響の可能性としては非常に低いものと解釈することができます。
⇒参考資料
☆ WHOファクトシート№322「超低周波電磁界へのばく露」(日本語訳)PDFファイルダウンロード
☆ WHO環境保健クライテリア№238「超低周波電磁界」(日本語訳) PDFファイルダウンロード
パソコンやテレビなどから発生する電磁界は、生殖過程や胎児への影響、眼の異常と関係があるのでしょうか?
 世界保健機関(WHO)が1998年7月に公表したファクトシート№201「ビデオディスプレイ装置(VDUs)」によれば、「VDUsからの電磁界による生殖過程への影響を明らかに示すことはありませんでした。」また、「白内障や他の眼の疾病とVDU作業との間に関連は全く見出されませんでした。」と結論付けられています。
⇒参考資料
☆ WHOファクトシート№201「ビデオディスプレイ装置(VDUs)」(日本語訳)PDFファイルダウンロード
IH調理器の近くにいると健康に悪い影響を及ぼすのでしょうか?
 IH調理器は、電源回路から発生する50ヘルツ(Hz)ないし60ヘルツ(Hz)の電磁界(超低周波電磁界)以外に、鍋を加熱させるためコイルに電流を流し20~90キロヘルツ(kHz)の電磁界(中間周波電磁界)を発生させて調理をおこないます。なお、この周波数帯における国際非電離放射線員会(ICNIRP)が示したガイドライン値は27マイクロテスラ(μT)です。
 IH調理器は近年急激に普及してきたこともあり、IH調理器に用いられている中間周波電磁界に関する研究データは、低周波電磁界や高周波電磁界に比べ少ないと言われています。そのため、さらなる研究が必要とされていますが、現在までのところ健康に影響があるという研究結果はありません。
 なお、国際的な測定規格(IEC62233)に基づく測定結果が制限値未満であったことが財団法人家電製品協会の調査報告(平成19年度 家電製品から発せられる電磁波測定(10Hz~400kHz)調査)の中で示されています。
⇒参考資料
☆ WHO情報シート「中間周波(IF)」(日本語訳)PDFファイルダウンロード
電子レンジの近くにいると健康に悪い影響を及ぼすのでしょうか?
 電子レンジは、食品を温めるのに効率の良い2.45ギガヘルツ(GHz)の電磁界(マイクロ波)を発生させて調理をおこないます。水の分子はマイクロ波のエネルギーを吸収すると振動し、分子間に摩擦が生じて熱を発し、その熱が食物を調理します。ただし、電子レンジのスイッチを切った後は、レンジの庫内にも食物にも、マイクロ波エネルギーが残存することはありません。
 マイクロ波のエネルギーは人体に吸収されると、組織内で熱を発生させます。眼球のように血液の供給が少なく温度調節機能の弱い器官、あるいは睾丸のように温度に敏感な組織は、非常に強いマイクロ波を浴びた場合、熱による損傷を受ける可能性があります。しかし、熱損傷が起きるのは、電子レンジの周囲における測定値よりはるかに高いレベルに長時間ばく露された場合だけですので、通常の使用環境においては、そのような強い電磁界を浴びることはありません。したがって、家庭で使用している電子レンジからの電磁界が健康に影響を及ぼすことはないと考えられます。
 なお、電子レンジは、マイクロ波がレンジの内部に確実に閉じ込められるように、スイッチが入っていて扉が閉じられている状態でのみマイクロ波が出されるように設計されています。
⇒参考資料
☆ WHO情報シート「電子レンジ」(日本語訳)PDFファイルダウンロード
携帯電話の基地局の近くに長く住んでいると、健康に悪い影響が出てくるのでしょうか?
 世界保健機関(WHO)が公表したファクトシート№304(基地局および無線技術)によれば「基地局および無線ネットワークからの弱いRF信号が健康への有害な影響を起こすという説得力のある科学的証拠はありません。」と結論付けられています。
また、日本では、高周波電磁界(電波)の人体への影響に関して、電気通信技術審議会が1990年6月に「電波利用における人体の防護指針」、1997年4月に「電波利用における人体防護の在り方」(総称して、電波防護指針)を総務省に答申しました。これを受け、総務省は、電波防護指針を制度化するため、1999年10月に電波法施行規則、2002年6月に無線設備規則を制定しました。
  よって、通信事業者は「電波防護指針」に基づき電波の強さが基準値を超えないように携帯電話基地局の運用を行うとともに、携帯電話基地局のアンテナの極近傍など基準値を超える場所には一般の人が容易に立ち入れないよう柵などを設置しています。
なお、一般的には基地局から200m程度離れれば、基準値の1/1,000程度の電波の強さになります。
⇒参考資料
☆  WHOファクトシート№304「基地局および無線技術」(日本語訳)PDF ファイルダウンロード
鉄道や新幹線などから発生する静磁界は、健康に悪い影響を及ぼすのでしょうか?
 非常に強い静磁界の中で人が行動した際、目眩、吐き気等の一時的な感覚を体験する場合があります。しかし、鉄道や新幹線内において、そのような強い静磁界は発生していません。したがって、鉄道などからの静磁界が健康に影響を及ぼすことはないと考えられます。
 なお、国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)は、2009年3月「静磁界のばく露限度値ガイドライン」の見直しを行いました。そのガイドラインによれば、一般公衆のばく露限度値は400,000マイクロテスラ(μT)=400ミリテスラ(mT)とされています。
⇒参考資料
☆ ICNIRPファクトシート「静磁界のばく露限度値に関するガイドライン」(日本語訳)PDFファイルダウンロード
☆ ICNIRPガイドライン「静磁界のばく露限度値に関するガイドライン」(日本語訳)PDFファイルダウンロード
電磁界と電磁過敏症に因果関係があると聞いたことがあるのですが?
 世界保健機関(WHO)は、ファクトシート№296で次のように述べています。
「EHSは、人によって異なる多様な非特異的症状が特徴です。それぞれの症状は確かに現実のものですが、それらの重症度はまちまちです。EHSは、その原因が何であれ、影響を受けている人にとっては日常生活に支障をきたす問題となり得ます。EHSには明確な診断基準がなく、EHSの症状を電磁界ばく露と結び付ける科学的根拠はありません。その上、EHSは医学的診断でもなければ、単一の医学的問題を表しているかどうかも不明です。」
⇒参考資料
☆ WHOファクトシート№296「電磁過敏症」(日本語訳)PDFファイルダウンロード