論文解説

 学術誌「Biochemical and Biophysical Research Communications」に論文「人体ばく露限度を下回る無線周波電磁界へのばく露による腫瘍プロモーション」が掲載されました(2015年3月)。

 この論文では『この研究は、発がん物質を投与したマウスにおける無線周波電磁波(RF-EMF)の腫瘍プロモーション作用を報告した先行論文(Tillmann他,2010)の再現実験を行った。先行論文より群当たりの動物数を増やし、ばく露レベルも2レベル追加し、SARを0(疑似)、0.04、0.4、W/kgとした。その結果、先行論文の結果が確認された;ばく露群では、疑似ばく露群に比べ、肺と肝臓での腫瘍発生数が有意に多かった;リンパ腫も同様に有意に増加した;明白な量反応関係はなかった。』(要約)と述べられています。

 電磁界情報センターでは、学術専門家グループ(Rapid Response Group;RRG*)から論文に関する評価を得ましたので、以下に紹介します。

【論文タイトル】

Tumor promotion by exposure to radiofrequency electromagnetic fields below exposure limits for humans.
(人体ばく露限度値を下回る無線周波電磁界へのばく露による腫瘍プロモーション)

【著者名】

Lerchl A 他8名

【掲載学術誌】

Biochemical and Biophysical Research Communicatons| Available online 6 March 2015| DOI: 10.1016/j.bbrc.2015.02.151

学術専門家 RRGの評価書の結論

 この研究は、しっかりと実施されており、その結果は全般的にTillmannのパイロット研究に一致しているものの、量反応関係が全く見られないことについて、筆者らは詳しく議論していないが、これは研究結果を非常に説得力のないものにする。また、RFばく露が局所的熱作用を引き起こし、それが母マウス及び/又は仔マウスの代謝又は血流に変化を起こし、その結果としてエチルニトロソ尿素(ENU)の体内動静に変化がもたらされた可能性を示唆しているが、この説明が正しいならば、最も高いSARを用いた場合に大きな影響が得られていたはずであるが、そのようなことは見られなかった。現時点では、今回の研究結果についてはメカニズムに立脚した説明を提供することは不可能である。また、なぜ0.4W/kgのばく露レベルで腫瘍プロモーションに対する一貫した影響があり、それより高いばく露レベルでは影響が見られないのかについて、説得力のある説明を行っていない。
 全体的に言えば、Lerchl研究の結果は、RFばく露に何らかの腫瘍プロモーション作用があるか否かを明らかにするために、同様ではあるがより先進的な動物モデルを用いてこれから実施されるべき動物研究のために、一つの作業仮説を提供したに過ぎない。今回の研究結果が脳腫瘍に対する影響を何も見出さなかったことを考えれば、携帯電話の激しい使用による脳腫瘍の増加を報告している少数の疫学研究に対する裏付けは何も提供していない。

<なお、詳細なRRGの評価につきましては、以下のファイルをご覧ください>

*1 RRG:電磁界情報センターが組織する専門家ネットワークの一部で、海外の専門家からなる
       科学論文レビューグループ 代表 マイク・レパコリ教授

ページの先頭へ戻る