米国国家毒性プログラム報告書「ラットでの携帯電話電磁放射発がん研究」専門家評価

                                         2016.6.20掲載

米国国家毒性プログラム(NTP)は、米国通信業界で使用されている周波数および変調方式の無線周波電磁放射(RF)に関して、げっ歯類を用いた広範な毒性学および発がんの研究を実施しました。

 NTP研究は、RF全身ばく露による潜在的、長期的な健康影響を評価する目的で研究デザインが設計されました。対象はラットおよびマウス、ばく露システムは残響チャンバで、2通りの信号変調方式(CDMAおよびGSM)と2通りの周波数(ラットには900 MHz 、マウスには1900 MHz)を用い、ばく露群の全身SAR計算値を1.5 W/kg、3 W/kg、6 W/kgとして、ばく露は胎仔時から開始し、最長106週間継続しました。

 NTPは、2017年末に予定されている研究全体の報告書公表に先立ち、ラットでの研究において、RFばく露を受けた雄に脳および心臓での低い腫瘍発生率が観察されたことについて、研究結果の一部の報告書として2016年5月26日公表しました。

  電磁界情報センターでは、学術専門家グループ(Rapid Response Group;RRG*1)から報告書に関する評価を得ましたので、以下に紹介します。

 ※ NTPは、連邦政府の省庁間プログラムで、保健福祉省(HHS)に属する国立衛生研究所(NIH)の一部である
 国立環境衛生科学研究所(NIEHS)に本部を置き、公衆衛生に影響を及ぼすかも知れない環境中の物質を同定
 することで、公衆を保護することを目的としています。

 【報告書タイトル】

Report of Partial Findings from the National Toxicology Program Carcinogenesis Studies of Cell Phone Radiofrequency Radiation in Hsd: Sprague Dawley® SD rats (Whole Body Exposures). Draft 5-19-2016

[ラット(Hsd: Sprague Dawley® SD rats)における携帯電話無線周波電磁放射(全身ばく露)に関する国家毒性プログラム発がん研究からの知見の一部についての報告]

 【著者および書誌情報】

US National Toxicology Program report. [米国国家毒性プログラム報告書]
bioRxiv preprint first posted online May. 26, 2016; doi: http://dx.doi.org/10.1101/055699.

 学術専門家 RRGの評価書の結論

 この2500万ドルのNTP研究は、一般的に用いられる2つの携帯電話信号からのRF全身ばく露がラットおよびマウスでのがん発生に及ぼす影響を調査している。

 このNTP研究は、ラットおよびマウスが耐え得る可能性がある最高のRFばく露を用いた。したがって、動物の体内に重大な体温上昇は恐らく生じなかったと思われる。しかし、これらげっ歯類へのばく露は、基地局または携帯電話により人体に生じると想定されるばく露よりはるかに高いものである。

 げっ歯類の体温調節は体の大きさによって異なることが知られている。最高レベルのRFばく露(6 W/kg)において、雄ラットは、より体の小さな雌ラットと同じようには耐え得なかったかも知れない。またさらに体の小さいマウスは熱作用を容易く処理すると思われる。したがって、何らかの影響が見られたとしても、それは生涯にわたる体温調節がもたらしたストレスによるものであり、RF電磁界の何らかの特定の作用によるものではない可能性を排除できない。

 指摘したような重大な問題点を考慮すれば、得られたデータは、携帯電話からのRF電磁界への人体ばく露に関連した健康影響についての証拠のバランスを変化させない。このことは、職業者および一般公衆へのRFばく露を制限する現在の国際基準は依然として安全であることを意味する。指名を受けた報告書の査読者の一人は、「私は著者らの結論を受け入れることはできない」と述べている(Lauer、報告書37ページの査読者)。この研究は、RF ばく露を制限する現存の国際基準を変更する理由を提供していない。

 <なお、詳細なRRGの評価につきましては、以下のファイルをご覧ください>

 *1 RRG:電磁界情報センターが組織する専門家ネットワークの一部で、海外の専門家からなる
  科学論文レビューグループ 代表 マイク・レパコリ教授