電子レンジから発生する電磁界

電子レンジの原理 1) 2)

電子レンジの概要図
■電子レンジの概要図
水分子の振動イメージ図
■水分子の振動イメージ図

 電子レンジは「マグネトロン」と呼ばれる電子管から周波数2.45ギガヘルツの電磁波(波長が短いのでマイクロ波ともいいます)を発生させます。このマイクロ波と水の分子によって、電子レンジによる調理が可能になっています。

○水の分子とマイクロ波

 ほとんどの食品には、水分が含まれています。水は、マイクロ波のエネルギーを非常に吸収しやすい性質を持っています。これは、水の分子の構造に関係します。水の分子は、正の電荷と負の電荷の重心が一致しない状態です。この状態の分子は、極性分子といわれています。極性分子は、自然の状態では、その置かれた温度に応じて動いています(熱揺らぎといいます)が、極性の方向は無秩序、バラバラです。したがって、全体としては極性がありません。このとき、電磁波を当てることで分子の極性を一定の方向に揃えることができます。揃えるときの動きは、電磁波の周波数に関係して違いが生じます。たとえば、低い周波数が当たると、電磁波の波(正と負の変化)はゆっくりした動きですので、その動き(速さ)に合わせて分子は、極性を揃える動きができます。一方、高い周波数が当たると電磁波の波は急激な動きとなるため、分子はその波の急激な動きに合わせられなくなります。その結果、分子の極性を揃える動きに少し遅れる傾向が現れます。この遅れは、電磁波の波の動きに対して抵抗力として効くこととなり、電磁波のエネルギーは、水に吸収されます。これを誘電損失といいます。水に吸収された電磁波のエネルギーは熱に変わり、水が加熱されます。

 

○マイクロ波による加熱・調理
 氷を電子レンジで解凍しようとすると、水の加熱ほどうまくできません。これは、水の結晶である氷は、水のような分子の動きができませんので、マイクロ波領域での誘電損失が水に比べると非常に小さくなります。この結果、氷のマイクロ波エネルギーを吸収する効率は、水に比べて非常に悪いことになります。

 冷凍された食品は、食品に含まれている水分が氷になっています。この冷凍食品が解凍できるのは、冷凍食品が氷と氷以外の物質の複合体となり、氷より大きい誘電損失を持つ物質になっていることも理由です。冷凍食品を解凍する場合、すべての氷が同時に水になることはできません。この結果、氷と水が共存する状態になります。この状態では、マイクロ波エネルギーの大部分は水に吸収されるため、水の温度が高くなっても氷は氷のまま残っている状況となりますが、やがて、温められた水の熱で冷凍食品は解凍されることになります。

電子レンジを使用している女性のイラスト

 このようなことから、食品を調理、加熱する場合に加熱時間を長くし過ぎると、食品に含まれる水分が蒸発してなくなり、食品の温度が100度を超えて上昇し続けます。この結果、食品が炭化し、発煙、発火につながりますので、注意が必要です。




 

電子レンジの電磁波(マイクロ波)の性質、強さ

 マイクロ波は、物質に当たると反射、透過、吸収の現象を起こします。マイクロ波が物質と相互作用するとき、金属等の電気を通す物質(導体といいます)には、その表面に電流が流れますので、導体はマイクロ波エネルギーの一部を吸収(ジュール損失と呼ばれています)し、熱になりますが、大部分のエネルギーを反射します。電気を通さない物質(絶縁体といいます)は、マイクロ波を透過、あるいはエネルギーを吸収したりします。マイクロ波のエネルギーを吸収する程度は物質の種類により異なります。金属等の導体がマイクロ波を反射する性質を応用して、電子レンジ室内やドアにステンレス等の金属を使用して、マイクロ波が外に漏れないようにしています。ガラス、陶器等はマイクロ波を透過しますので、電子レンジでの食品加熱用の器に利用され、水を含んだ食品はマイクロ波を効率良く吸収し、加熱されることとなります。

 電子レンジで発生する電磁波(マイクロ波)は、電子レンジに対する国際規格あるいは、国内規格(電波法、電気用品安全法)の許容レベル(レンジ外面から5cmの全ての位置において、ドアを閉めたとき10W/m2、レンジの発振停止装置が動作する直前の最大の位置までドアを開いて固定した時50W/m2)より十分低い水準になるように設計されています。また、調理中にドアを開けた時にはスイッチが切れ、マイクロ波の発生が停止するように設計されています。したがって、健康に影響をおよぼすレベルの電磁波が出ることはありません。

食品の安全性

 「電子レンジで調理すると、その食品は放射能を含んで危険だ」という声を時々聞きます。しかし、電子レンジで発生するマイクロ波は放射線ではありません。WHOの情報シート3)「電子レンジ」では、『メーカーの取扱説明書に従って使用する限り、電子レンジは安全であり』、『誤った理解をしないために重要なことは、電子レンジで調理された食品が「放射性物質になる」ことはないとしっかり認識することです。さらに、電子レンジのスイッチを切った後、レンジ庫内にも食品にもマイクロ波エネルギーが残存することはありません。この点に関しては、ちょうど電球を消した時に光が残らないように、マイクロ波の振る舞いはまさに光と同じです。』と述べられています。

[参考資料]

1)マイクロ波化学プロセス技術、シーエムシー出版
2)生活家電の基礎と製品技術第3版、NHK出版
3)「WHO情報シート 電子レンジ」“Microwaveovens” Information sheet, WHO (世界保健機関) (2005)
 https://www.who.int/peh-emf/publications/facts/info_microwaves/en/
 https://www.jeic-emf.jp/assets/files/pdf/fag/Jyohou_2.pdf(和文)


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