小児白血病の基礎知識

白血病とは

 日本血液学会では

 『白血病は遺伝子変異の結果、増殖や生存において優位性を獲得した造血細胞が骨髄で自律的に増殖するクローン性の疾患群である。白血病は分化能を失った幼若細胞が増加する急性白血病と、分化・成熟を伴いほぼ正常な形態を有する細胞が増殖する慢性白血病に分けられる。また分化の方向により骨髄性とリンパ性に大別される』

としています。

 すなわち、白血病はがん化した血液細胞(白血病細胞)が骨髄で無秩序に増加する疾患です。骨髄はさまざまな血液細胞を造り出す場ですので、骨髄で白血病細胞が増加すると、正常な血液細胞を造り出す機能が障害されます。また、骨髄から血液中に白血病細胞があふれ出し、さまざまな臓器を障害することもあります。白血病患者の血液中では白血病細胞あるいは病的な白血球を含めると白血球総数は著明に増加することも、あるいは減少することもあります。しかし、全身の血液中の正常な白血球は減少し、血小板や赤血球も多くの場合減少します。

白血病の種類と主な症状

 白血病には、白血病細胞が若くて未成熟(未分化)な「急性白血病」と、白血病細胞が成熟傾向を持つ「慢性白血病」があります。白血病の医学史では、白血病細胞が幼若な形態のほうが死にいたる時間が短いとの経験から「急性」と名付けられ、もう一方は「慢性」と呼ばれるようになりました。急性白血病が慢性化したものが慢性白血病という訳ではありません。また、白血病細胞の由来によって、「骨髄性」と「リンパ性」に分類されます。

急性白血病 急性リンパ性白血病(ALL:acute lymphoid leukemia)
急性骨髄性白血病(AML:acute myelogenous leukemia)
慢性白血病 慢性リンパ性白血病(CLL:chronic lymphoid leukemia)
慢性骨髄性白血病(CML:chronic myelogenous leukemia)

 主な症状として、急性白血病の場合には、一般的に以下の症状が出やすくなります。

 ・正常な白血球の減少 :細菌などに対する抵抗力の低下による発熱や肺炎など

 ・赤血球の減少    :動悸、息切れ

 ・血小板の減少    :鼻血、出血斑

 慢性白血病の場合は、初期症状はあまりみられませんが、進行するに従い、急性白血病と同様な症状が現れることがあります。

小児白血病

 小児白血病は、小児がんの3 分の1 を占める病気で、そのうち95%が急性白血病です。その約4 分の3 が急性リンパ性白血病(ALL)、4 分の1 が急性骨髄性白血病(AML)です。治癒率は80%以上で、日本での最近の罹患率は年間に10 万人当たり2.6 人です。発病の原因やメカニズムは不明です。遺伝的素因、感染症罹患歴、都市化などのさまざまな環境要因についての疫学研究や生物学的研究が行われていますが、明らかな結果はえられていません。

小児白血病と超低周波電磁界

 下図は、日本国内の電力消費量の推移と小児白血病の罹患率を調べたものです。この図をみると、2003 年の電力消費量は1975 年に比べて2 倍以上増えていますが、小児白血病の罹患率には逆にやや減少傾向がみられます。

 このように集団(この例では国)を単位として、病気の発生率とある要因の量について年次推移の傾向を調べるのは一種の記述疫学です。記述疫学は、症例対照研究やコホート研究などの分析疫学[▶Ⅱ(5-1)]とは異なり、集団を構成する個々人が持つ交絡因子の調整が不十分です(せいぜい、性年齢分布を標準化する程度です)。したがって、集団レベルで観察されたことが個人レベルでも成り立つとは限りません。また、病気の発生率の年次推移には、診断技術の向上など医学的変化も影響しますし、小児白血病のような稀少疾患では年間発生率が本来的に変動します。

 したがって、大掴みには超低周波磁界が大きく増大した期間に対応して小児白血病の発生が増えたという事実はないことが読みとれます。

電力消費量と小児白血病の羅患率の推移


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