WHOの小児白血病以外のリスク評価結果

     小児白血病以外のリスク評価についても、WHOの環境保健クライテリア No.2381)の評価が広く参考にされています。また、ファクトシートNo.3222)にこの問題に対するWHOの公式見解が示されています。

環境保健クライテリアNo.2381)

     前章と同じく、第1章「要約と勧告」から、影響項目ごとに評価結果の要点と、最後にそれらを総合したリスク評価結果を紹介します。
➢  神経行動

  • ボランティア研究における、脳の電気的活動、認知、睡眠、過敏性および気分などのその他の神経行動的影響に関する証拠はあまり明確ではありません。
  • ばく露がうつ症状または自殺を誘発することを示す証拠は、矛盾し、かつ決定的でないものしかありません。したがって、その証拠は不十分と考えられます。

➢  神経内分泌系

  •  全体として、えられているデータは、超低周波電磁界がヒトの健康に有害な影響を与えるような神経内分泌系の影響をもたらすことを示しておらず、したがって、証拠は不十分と考えられます。

➢  神経変性疾患

  • 超低周波電磁界ばく露とアルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症との関連についての証拠は不十分です。
  • パーキンソン病と多発性硬化症については、研究の数が少なく、これらの疾病との関連を示す証拠はありません。

➢  心臓血管系疾患

  • 短期および長期ばく露の実験研究はいずれも、電気ショックは明白な健康ハザードではあるが、その一方、電磁界と関連するその他の危険な心臓血管系への影響が一般環境または職業的に通常遭遇するばく露レベルで起こることはないと考えられています。
  • 全体として、心臓血管系疾患との関連を支持する証拠はありません。

➢  免疫系と血液学

  • 超低周波電磁界ばく露が免疫系の構成要素に及ぼす影響に関する証拠は、全般的に一貫性がありません。
  • 超低周波電磁界ばく露が血液系におよぼす影響について実施されている研究は少数です。
  • ヒトおよび動物研究のいずれにおいても、急性ばく露の一貫した影響はありません。

➢  生殖および発育

  • 全体として、疫学研究は、ヒトの生殖への影響と母親または父親の超低周波電磁界ばく露との関連を示していません。母親の磁界ばく露に関連した流産のリスク上昇についての証拠がいくつかあるが、この証拠は不十分です。
  • 生物学的研究を含め、全体として、発育への影響および生殖への影響に関する証拠は不十分です。

➢  小児白血病以外のがん

  • 疫学研究では、IARC(国際がん研究機関)モノグラフNo.80以降、超低周波磁界ばく露と関連した成人女性の乳がんリスクに関する報告がいくつか公表されています。これらの研究は、それ以前の研究より規模が大きく、バイアスに影響されにくいものですが、全体として否定的な結果を示しました。これらの研究により、超低周波磁界ばく露と女性の乳がんリスクとの関連に関する証拠はかなり弱くなり、この種の関連は支持されていません。
  • 成人の脳腫瘍と白血病については、IARCモノグラフ以降に新たな研究が公表されましたが、超低周波磁界ばく露とこれらの疾患リスクとの関連に関する全体的な証拠は不十分という結論を変更させるものではありません。
  • その他の疾病およびその他のすべてのがんについて、疫学研究の証拠は不十分です。
  • 動物研究の結果には、全体として、超低周波磁界へのばく露単独が腫瘍を誘発する証拠はありません。超低周波磁界ばく露を発がん性物質と組み合わせると腫瘍発生を増強させる証拠は不十分です。
  • 全般的に見て、細胞への超低周波磁界ばく露の影響に関する研究は、50 ミリテスラ以下の磁界で遺伝毒性の誘発はないことを示しています。その他、多くの研究が一貫性のない、または決定的ではない結果を示しています。
  • IARC モノグラフ(2002)以降に公表された、ヒト、動物および細胞の新規の研究は、超低周波磁界の総合的分類「ヒトに対して発がん性があるかもしれない」を変更させるものではありません。

➢  総合的リスク評価結果
 小児および成人のがん、うつ病、自殺、生殖機能障害、発育異常、免疫学的変化および神経学的疾患などのいずれの疾患についても、超低周波電磁界ばく露との関連を支持する科学的証拠は、小児白血病に関するものよりはるかに弱く、いくつかの場合(たとえば、心臓血管系疾患や乳がん)においては、磁界が疾患を誘発しないと確信するのに十分な証拠があります。

WHOファクトシートNo.3222)

     ファクトシートNo.322では、「超低周波磁界ばく露との関連の可能性について、多数の健康への有害な影響が研究されています。白血病以外の小児がん、成人のがん、うつ病、自殺、心臓血管系疾患、生殖機能障害、発育異常、免疫学的修飾、神経行動学的影響、神経変性疾患などです。WHOのタスクグループは、これらの健康影響全てについて、超低周波磁界ばく露との関連性を支持する科学的証拠は小児白血病に関する証拠よりはるかに弱いと結論しました。また、いくつかの場合(すなわち心臓血管系疾患や乳がん)、超低周波磁界はこれらの疾患を引き起こさないという証拠が示されています。」と述べています。

 

[参考資料]


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