電磁界問題(これまでの経緯)

 電磁界の健康問題は、商用周波(50ヘルツおよび60ヘルツ)の電界による影響がきっかけとなりました。

電界の問題

 そもそものきっかけは、1966年にソビエト連邦(当時)における電力施設で働く作業員の不定愁訴に関する報告があり、超低周波の電界により健康影響が疑われましたが、その後の調査で、電界による健康影響はなさそうであるとの結論にいたっています。

磁界の問題

 磁界による健康影響については、1979年に米国コロラド州デンバー地区において配電線の近くに住む子供は小児がんによる死亡率が高いと疫学調査の報告がありました。
 米国では、この報告が発端となり1992年に「電界および磁界の研究と公衆への情報普及計画(EMF RAPID計画)」を発足させ、1999年に「超低周波電磁界へのばく露が有害であることを示す科学的証拠は弱い」との結論を公表しました。[▶VI(参考3)
 これと相前後して、世界保健機関(WHO:World Health Organization[▶VI(1)])は、1996年に電磁界ばく露の健康リスク評価を目的として「国際電磁界(EMF)プロジェクト」を開始しています。このプロジェクトは5年計画で2000年には終了する予定でしたが、徐々に延長され2013年現在でも継続中です。
 EMF RAPID計画は50ヘルツあるいは60ヘルツの電磁界のみを対象としていましたが、国際電磁界プロジェクトは、静電磁界(0ヘルツ)、50ヘルツあるいは60ヘルツの商用周波電磁界を含む超低周波電磁界(0~300ヘルツ)、中間周波電磁界(300ヘルツ~10メガヘルツ)、高周波電磁界(10メガヘルツ~300ギガヘルツ)と広範囲です。ただし、当初の関心は、何といっても超低周波電磁界の健康影響評価でした。
 国際電磁界プロジェクトへの参加国数は、発足当初16カ国でしたが、現在は53カ国となり、電磁界の健康影響に関心を持つ国が増えてきます。
 2001年に国際がん研究機関(IARC:International Agency for Research of Cancer[▶VI(2)])が、超低周波磁界に対して「発がん性があるかもしれない(グループ2B)」、超低周波電界および静磁界、静電界に対して「発がん性を分類できない(グループ3)」との、発がん性評価を公表しました。
 2006年には、WHOは静電磁界に関する環境保健クライテリア(EHC:Environmental  Health Criteria)No.232[▶VI(参考2)]を発刊し、研究数が少ないものの、静電磁界に関するこれまでの研究からは長期的なあきらかな健康影響は見当たらないと判定しました。続いて2007年には超低周波に関するEHC No.238[▶VI(参考1)]を発刊し、「磁界と小児白血病との間に見られる関連性は、因果関係と考えるほどには証拠は強くないが、関心を残すには十分強い」と公表しました。
 なお、高周波電磁界に関しては、2011年にIARCが「発がん性があるかもしれない(グループ2B)」との発がん性評価を公表しました。WHOは2014年以降に高周波に関するEHCを発刊する予定です。

日本国内における経緯

 我が国では、1976年に電力設備における電界に対する規制が導入されました。ただし、これは人に対する健康影響を防止するという目的ではなく、静電誘導による電撃を防止するために導入されたものです。
 生物影響に関する研究は、1982年に電力中央研究所が「電磁界の生物影響研究」に着手しました。
 1984年には、日米科学技術協定により米国エネルギー省と共同研究を開始し、1992年に「電磁界がヒヒの行動・神経生理に与える影響は認められない」との研究結果を公表しました。
 その後も、環境庁(現環境省)や科学技術庁(現文部科学省)、通商産業省(現経済産業省)、厚生労働省が研究を行いました。
 それらの研究結果は概ね、超低周波電磁界による健康への影響は認められないとされましたが、国立環境研究所が2006年に報告した健康リスクに関する疫学研究(兜研究)では、0.4マイクロテスラ以上の長期的ばく露で小児白血病の一部にリスクの上昇が観察されました。[▶II(参考3)
 電力設備から発生する電磁界に関しては、2007年、経済産業省がWHOの動きと平行して、総合資源エネルギー調査会 原子力安全・保安部会 電力安全小委員会内に「電力設備電磁界対策ワーキンググループ」を設置し検討を行い、2008年6月の報告書では、国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP:International Commission on Non‑Ionizing Radiation Protection[▶VI(3)])ガイドラインにもとづく磁界制限の導入、研究の推進、電磁界情報センター機能の構築、リスク・コミュニケーションの充実などの政策提言を公表しました。
 この提言を受け、中立的な常設の電磁界情報センター機能を持った組織として、電磁界情報センターが2008年7月に設立されました。
 また、2011年3月には、電力設備から発生する磁界のレベルに制限を設けることが決定され、同年10月に経済産業省令(電気設備の技術基準[▶IV(3)])が施行されました。

 


電力設備電磁界対策ワーキンググループ委員の構成
・電気・電磁波分野および医学
・生物学分野の専門家委員:6名
・電気事業連合会委員:1名
・消費者代表およびマスメディア等の委員:5名

電力設備電磁界対策ワーキンググループ報告書

 

pdf 印刷用ファイル [PDF 0.79MB]