5-4 IARCモノグラフとはどのようなものですか?

国際がん研究機関(IARC)のモノグラフ・プログラムは、ヒトに対する発がんのハザード(有害性)を特定することを目的としています。対象には、化学物質(例:ホルムアルデヒド)、複雑な混合物(例:大気汚染)、職業的ばく露(例:コークス製造)、物理的作用因子(例:放射線)、生物学的作用因子(例:B型肝炎ウィルス)、生活様式(例:喫煙)が含まれます。

具体的な発がん性の評価は、IARCが世界中から招聘する独立した専門家で構成されるワーキンググループ(WG)が実施します。専門家は事前に、入手可能な科学的証拠(主に既刊の査読済み論文)に基づいて文書を起草し、約8日間のWG会議で、対象の作用因子ががんを生じるかどうかについての評価をとりまとめます。WGは厳格な基準に従って証拠を精査し、その作用因子ががんを生じるという証拠の強さを決定します。IARCはWGの事務局を務めます。

IARCモノグラフ・プログラムでは、「ヒトにおける発がん性の証拠」、「実験動物における発がん性の証拠」、「メカニズムの証拠」に基づき、各種の作用因子の発がん性をそれぞれ以下のように分類しています。

  • ヒトに対して発がん性がある(グループ1)
  • ヒトに対しておそらく発がん性がある(グループ2A)
  • ヒトに対して発がん性があるかもしれない(グループ2B)
  • ヒトに対する発がん性を分類できない(グループ3)

IARCモノグラフ・プログラムでは、電磁波(電磁界)の発がん性を以下のように分類しています。

  • 静電界:発がん性を分類できない(グループ3)
  • 静磁界:発がん性を分類できない(グループ3)
  • 超低周波電界:発がん性を分類できない(グループ3)
  • 超低周波磁界:発がん性があるかもしれない(グループ2B)
  • 高周波電磁界:発がん性があるかもしれない(グループ2B)

IARCモノグラフ・プログラムでは、これまでに1000種類以上の作用因子を評価しており、そのうち400種類以上についてヒトに対する発がん性を分類しています。IARCの分類は、ある作用因子そのものの性質としてがんを生じる可能性(すなわちハザード)があるかどうかについての証拠の重みを示すものであり、その作用因子へのばく露の結果としてがんが生じる見込み(すなわちリスク)の尺度となるものではない、という点に注意が必要です。
IARCの評価は、各国および国際的な保健機関が潜在的な発がん因子へのばく露を予防するための対策を検討する際に利用されますが、IARC自身が規制、法律または公衆衛生への介入を推奨することはなく、それは個々の政府および他の国際機関(例えばWHO)の役割です。

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