10-5携帯電話の健康影響に関する研究結果の公表が予定されていると聞きましたが、どのような内容がどのようなスケジュールで公表されるのでしょうか?

世界保健機関(WHO)は、電磁波(電波)の総合的な健康リスク評価を実施し、その評価結果を環境保健クライテリア(EHC)文書として2023年以降に刊行することを予定しています。

携帯電話やスマートフォンは、通話やデータ伝送時に電波を発します。一般的に、携帯電話は通話時に耳のそばで使用されることから、電波ばく露は主に頭部に集中します。このため、電波ばく露の健康影響としては、頭部への影響、特に脳腫瘍に焦点が当てられてきました。携帯電話が発する電波が脳腫瘍の発症に及ぼす影響については、これまで数十年間にわたり世界中で研究が実施されています。

例えば、携帯電話の使用者における脳腫瘍の発症との関係を統計学的に分析した大規模な疫学研究(通称「インターフォン研究」)が、WHOのがん研究専門機関である国際がん研究機関(IARC)の調整の下で、日本や欧米主要国を含む13か国で実施されました。その結果、大多数の使用者(累積使用時間で上位10%未満)では、非使用者と比較して脳腫瘍の発症リスクの上昇は認められませんでしたが、一部の長時間使用者(累積使用時間で上位10%以上)では、非使用者と比較して脳腫瘍の発症リスクの上昇が認められました。ただし、この研究では、長時間使用者が申告した携帯電話の使用時間が過大であった可能性があるなどの問題点があり、携帯電話使用と脳腫瘍との因果関係があるかどうかを解釈できない、と著者ら自身が指摘しています。
IARCは、インターフォン研究やその他の疫学研究、ならびに動物研究や細胞研究の成果に基づき、電波の発がん性についての総合的に評価を実施し、「ヒトに対して発がん性があるかもしれない(グループ2B)」に分類しました。
ただし、WHOはIARCの評価に関連して、「携帯電話が潜在的な健康リスクをもたらすどうかを評価するために、これまで20年以上にわたって多数の研究が行われてきました。今日まで、携帯電話使用を原因とするいかなる健康影響も確立されていません。」との見解を示しています。

これとは別に、げっ歯類(ラットとマウス)を用いて、一生涯に相当する2年間にわたって携帯電話と同様の電波にばく露した大規模な動物研究が、米国の国家毒性プログラム(NTP)の下で実施されました。その結果、最も強いレベルの電波[全身に対する比吸収率(SAR)が6 W/kg(ワット/キログラム)]にばく露した雄のラットのグループでは、電波にばく露しなかったグループと比較して、心臓の悪性腫瘍などの増加が認められ、携帯電話電波には「発がん活性があることの明確な証拠」であると結論付けられました。ただし、この研究では、最も高いばく露レベルの電波が、国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)のガイドラインの制限値や、これと同等の米国の規制値(一般公衆の全身に対するSARで0.08 W/kg)よりも高かったことから、熱作用による悪影響があった可能性や、電波にばく露しなかったグループの生存率が異常に低かったことから、ばく露したグループの見かけ上のがん発生率が高くなったことなどの問題点が指摘されています。

IARCは、NTP研究などの最新の科学的知見に照らして、電波の発がん性を改めて評価することを予定しています。
また、WHOは、発がん性を含む全ての影響について、電波の総合的な健康リスク評価を実施し、その評価結果を環境保健クライテリア(EHC)文書として2023年以降に刊行することを予定しています。

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