低周波電磁界の人体への影響

低周波電界の人体への影響

強い電界がある環境では、人はその電界を感知し、不快感(ピリッとする感じ)を覚えますが、電界そのものは、体の表面(皮膚など)で遮へいされ、ほとんどが体内に浸透しません。

電界に対する国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)が公表する国際的なガイドラインのばく露制限値は、電界によって体内に誘導される電流による影響を防止することを目的に定められています。

また、電界の人体への影響については、1950 年代から研究されてきました。世界保健機関(WHO)ファクトシート№322「超低周波電磁界へのばく露」で、「一般の人々が通常で遭遇するレベルの超低周波電界に関して本質的な健康問題はありません」と結論付けています。

低周波磁界の人体への影響

科学的に立証されている人体への影響(短期的ばく露影響)

人体が非常に強い低周波磁界にばく露されると、電磁誘導によって体内に電流が発生し、その影響により神経や筋肉が刺激されることがあります。これを刺激作用といいます。

人の体内には、もともと脳の神経活動や心臓、筋肉の活動による生理的な電流が流れています(脳電図(脳波)・心電図・筋電図として観測することができます)が、これと同程度あるいはそれ以上の大きさの電流が低周波磁界の電磁誘導により体内に発生すると、刺激作用により健康に悪影響を及ぼす恐れがあると考えられています。

人体の中でこの電流に対して最も敏感な組織は目の網膜といわれています。例えば、日常生活中で遭遇するレベルの数100倍以上の非常に強い低周波磁界に頭部がばく露されると、目を閉じていても何か光が見えるような現象(磁気閃光現象)が生じる可能性があります。

この現象は健康への悪影響ではありませんが、網膜は頭部の中枢神経系の一部であり、これを回避すれば、脳機能に起きる可能性のあるすべての影響が防護されるはずであるという安全側の観点から、このしきい値(反応を生じる最小値)が国際的なガイドラインのばく露制限値の根拠になっています。

科学的に立証されていない人体への影響(長期的ばく露影響)

国際的なガイドラインのばく露制限値よりも低い低周波磁界に日常生活でばく露されることによる人体への影響(長期的ばく露影響)については、これまで数多くの研究が行われてきました。WHOは、超低周波磁界の健康影響に関して、発表された膨大な科学論文の評価を行い、その結果をファクトシートNo.322 「超低周波電磁界へのばく露」として公表しています。その結論で、「小児白血病に関連する証拠は因果関係と見なせるほど強いものではありません」と述べています。また、小児白血病発病以外の健康への悪影響(白血病以外の小児がん、成人のがん、うつ病、自殺、心臓血管系疾患、生殖機能障害、発育異常、免疫学的修飾、神経行動学的影響、神経変性疾患など)についての科学的証拠は、小児白血病に関する証拠よりはるかに弱い」と述べています。

高周波電磁界の人体への影響

科学的に立証されている人体への影響(短期的ばく露影響)

非常に強い高周波電磁界電波)にばく露されると、そのエネルギーの一部が体内に吸収され、熱となり体温が上昇します。これを熱作用といいます。
ただし、ある程度までの電波の強さであれば、人体の持つ体温の調節機能(血流の調節や汗をかくことで体温を一定に保つ機能)により、体温が上昇することはありません。

熱作用の評価に用いられる指標として、比吸収率(SAR:Specific Absorption Rate)を用います。SARとは、生体が電波にばく露されることによって、単位質量あたりの体内組織に単位時間に吸収されるエネルギー量をいいます。

電波塔や携帯電話の基地局などからの電波には、その発生源が遠くにあるため全身がほぼ平均的にばく露されますが、携帯電話の電波は全身ではなく局所が(頭部など人体の一部が)ばく露されますので、全身ばく露と局所ばく露を区別して全身平均SARと局所SARという指標でそれぞればく露量を評価しています。

科学的に立証されていない人体への影響(長期的ばく露影響)

電波のばく露による潜在的な長期的影響を調査した疫学研究では、主に脳腫瘍と携帯電話使用との関連を追究してきましたが、現在まで因果関係を示す証拠は確認されていません。WHOは2023年以降に、携帯電話に用いられる周波数帯を含む電波領域のがん以外の影響も含む健康リスク評価を行う予定です。

静電磁界の人体への影響

静電磁界[0Hz(ヘルツ)]のうち、静電界の人体への影響は、体表面での電界強度が十分に高い場合、体毛が逆立つこと(不快感)や放電による電気ショック(痛み)を知覚することがあります。その時の電界強度は10~45kV/m(キロボルト/メートル)の範囲と考えられています。

静磁界については、磁束密度が 2~4T(テスラ)を超える非常に強い静磁界の中で頭部を動かすと、めまいや吐き気、金属質の味覚、閃光を感じる場合があることが知られています。

また、WHOは静電磁界の健康影響に関して、評価結果をファクトシートNo.299 「静的な電界および磁界」として公表しています。その結論として、「人に対する発がん性は分類できません」と述べています。

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