日本における電力設備から発生する低周波電界および磁界の規制

電界については、静電誘導による人の不快な電界の感知(ピリッとする感じ)などを防止するため、1976年に経済産業省(当時:通商産業省)は、「電気設備に関する技術基準を定める省令」において高圧送電線下の地上1 m(メートル)における電界強度を3 kV/m(キロボルト/メートル)以下とする規制を実施しています(下表参照)。これは国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)が公表する国際的なガイドラインのばく露制限値に比べて低い値になっています。

磁界については、2011年に経済産業省は「電気設備に関する技術基準を定める省令」を一部改正し、磁束密度の平均値が200µT(マイクロテスラ)以下とする規制を実施しています(下表参照)。これは、2010年にICNIRPが世界保健機関(WHO)のリスク評価結果を踏まえて改定したガイドラインの低周波磁界の参考レベル[50・60Hz(ヘルツ)で200µT]に対応しています。

電力設備を対象とした低周波電磁界(50・60Hz)の一般公衆へのばく露に関する国内外の規制・ガイドライン等

制定年 電界 磁界
kV/m 区分 µT 区分





ICNIRP1) 2010年

5.0(50Hz)
4.2(60Hz)

ガイドライン

200(50Hz)
200(60Hz)

ガイドライン




日本

1976年(電界)
2011年(磁界)

3 規制

200
(50/60Hz)

規制
韓国 2020年 3.52) 規制 83.3(60Hz) 規制
米国3)  
ドイツ 2013年 5 規制 100(50Hz) 規制
スイス 2000年 5 規制 100(50Hz)4) 規制
フランス 2001年 5 規制 100(50Hz) 規制
スウェーデン 2002年 5 勧告 100(50Hz) 勧告
イタリア 2003年 5 規制 100(50Hz)4) 規制
英国5) 2011年 9 基準 360(50Hz) 基準
ノルウェー 2011年 5 規制 200(50Hz) 規制
オーストラリア 2015年 5 勧告 200(50Hz) 勧告

規制:法規に基づいた義務的な基準
ガイドライン・勧告・基準:法的な拘束力を持たない自発的な基準・方針

  • ICNIRP はWHO の環境保健クライテリアNo.238(超低周波電磁界)の発刊を受けて、ガイドラインを2010年末に改訂しました。それまでの磁界のガイドライン値(1998年版)は100µT(50Hz)、83µT(60Hz)でした。
  • 韓国では、電力設備以外の電界の規制値は、4.2kV/mです。
  • 米国には国レベルの規制はありませんが州レベルでは規制を設けている州もあります。
  • 本規制値(ばく露制限値)以外に住宅、病院、学校などの配慮が必要な場所[センシティブエリア]において、設備に対する念のための政策に基づき、スイスでは磁界の放出制限値(1µT)、イタリアでは注意値(10µT)、品質目標値(3µT)を設定しています。ただし、WHOの環境保健クライテリアNo.238(超低周波電磁界)は、このような念のための制限値を推奨しないと述べています。
  • 英国の基準は自主的実施基準であり、ICNIRPガイドライン(1998年版)から独自に換算した値に基づいています。

【出典】経済産業省「送電線等の電力設備のまわりに発生する電磁界と健康」(改訂第21版)

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