疫学研究結果で要因Aと疾患Bとの間に関連性が認められても、環境中にあるさまざまな環境要因のなかから、要因Aが原因で疾患Bを招く(因果関係がある)と証明するのは難しい作業です。その作業のひとつとして、疫学研究で示唆された関連性を裏付ける動物研究やそのメカニズムを解明する細胞研究といった生物学的研究が行われます。

さまざまな研究アプローチ 動物研究

人を対象とした疫学研究は、何といっても人間集団を調査したものですので、その結果は説得力を持ちます。しかし、発病にいたる過程には多種多様な要因と、場合によっては時間的要素なども複雑に関係します。病気の原因としてある要因Aだけの影響を抽出するのは大変困難です。ある要因の影響だけをみるためには、あたかも実験を行うように対象集団の個人個人の生活環境を完全に制御しなければなりませんが、そのようなことは実現不可能だからです。そのため、人を対象とする疫学研究で因果関係を立証することは非常に難しいのです。そこで、生物学的に人に近い哺乳類を対象とする動物研究で、要因Aだけを生活環境では出会うことの無い、かつ人でのばく露は倫理的に許されない大変強いレベルでばく露することでどのような影響が現れるかを調べ、その結果から人への影響を推測しています。

電磁界の健康影響に関する取り組みも同様です。哺乳類で最もよく用いられるのはラットやマウスです。健康影響で関心が高いのは「がん」ですので、「がん」に着目した研究を最も多く行っています。それ以外の健康影響として、生殖・発育機能、神経・行動機能、内分泌機能、血液・免疫系機能、心臓血管系機能など、さまざまな生理的・病態生理的変化や疾病発生の有無を追究しています。

長期的なばく露実験では、2年間(ほぼラットやマウスの一生涯に相当します)に亘って、非常に強い電磁界にばく露させて、「がん」の発症率(動物も加齢にともなって、「がん」で自然死します)が、ばく露させない動物群に比べて増加するか否かを調べたり、上記のさまざまな項目についてもばく露群と非ばく露群との間に差があるか否かを調べます。また、必要な場合は、ばく露群のばく露の強さ(高・中・低)に応じて反応の強さが変化することを示すばく露量・反応関係があるか否かも調べます。

中期的なばく露実験では、動物に「がん」を移植して、「がん」の細胞増殖への影響を調べることも行われています。この実験ではばく露群で、非ばく露群に比べて増殖が強いか否かを追究します。上記と同様に、「がん」細胞増殖の程度にばく露量・反応関係があるか否かも検討します。

短期的なばく露実験では、主として動物の種々の生理的機能に対する電磁界ばく露の急性影響を調べます。

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