組織の目的と変遷

国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP:International Commission on Non-Ionizing Radiation Protection)は、数十名の疫学、生物学、電気工学などの専門家からなる、独立した科学的専門組織です。

主な目的は、非電離放射線へのばく露の防護に関し指導と助言を与えることであり、科学的レビューを行い、その結果は世界保健機関(WHO)のリスク評価活動に取り入れられます。また、WHOのリスク評価結果を受けてICNIRPは、ばく露防護ガイドラインを改定してきましたが、2020年にはWHOのリスク評価を待たずに、独自にリスク評価を行って高周波のばく露防護ガイドラインを作成しました。

ICNIRPの歴史は、1964年に設立された国際放射線防護学会(IRPA)にさかのぼります。
1973年のIRPA会議で非電離放射線部門のセッションが開催され、1977年には国際非電離放射線委員会(INIRC:International Non-Ionizing Radiation Committee)が設立されました。INIRCは、波長が100nm以上の可視光線を除く全ての非電離放射線と、可聴領域以外の超音波や超低周波音に関するばく露防護ガイドラインを提唱していましたが、1992年にIRPA からICNIRPとして独立し、1996年には右図に示すように「疫学」、「生物学・医学」、「物理学・工学」、「光放射」の4常設委員会が設立されました。

ICNIRP の組織は2013年3月まで、委員14名、委員長・副委員長を含む本委員会と、4常設委員会およびコンサルティングエキスパートから成り立っていました。
本委員会メンバーは、委員会やIRPAなどが推薦する候補者から、選んでおり、任期は最大12年です。このメンバーには科学的中立性が求められています。我が国からは、1994年から3期にわたり首都大学東京の多氣昌生先生が、2012年からは情報通信研究機構(NICT)の渡辺聡一先生が本委員会メンバーに就任しました。

組織の目的と変遷

新組織体制での活動

2013年3月に、ICNIRPは本委員会と科学専門家グループ(SEG:Scientific Expert Group)で構成される組織となり、従来の常設委員会およびコンサルティングエキスパートは廃止されました。これは、「専門基盤の拡充と作業プロセスへの外部者の参加拡大を常に考慮する」というICNIRPの意図のもとで進められています。
SEGメンバーの選出手続きは次のような手順で行われました。まず、各国の国内IRPA組織およびICNIRP本委員会メンバーがSEGメンバー候補者を推薦します。次に、全ての候補者の中からICNIRP本委員会メンバーによる選出と利益相反宣言の審査を経て、SEGメンバーに任命されます。
なお、ICNIRPメンバーによる選出では、ICNIRPの使命と任務に対する候補者の科学的適切性、これに加えて、地域代表性、男女のバランスも考慮されています。余談ですが、WHOが電磁界の健康リスク評価を行うタスク会議メンバー選出の際にも科学的専門性と共に地域代表性や男女のバランスが考慮されています。2013年には、日本から名古屋工業大学の平田晃正先生、労働衛生総合研究所の奥野勉先生、電磁界情報センターの大久保千代次がSEGメンバーに就任しました。

新しい体制では、ICNIRP文書の作成のためにプロジェクトグループ(PG)を設置しました。PGは具体的な一つの作業計画による任務(例えば、ICNIRPドラフト文書の作成、ワークショップの編成など)の完遂に専念する組織で、その任務の完了をもって解散します。

PGメンバーは、本委員会およびSEGで構成され、必要に応じてさらなる専門家が追加されます。PGのメンバーは本委員会によって選出され、PG 座長の承認が求められます。
本委員会メンバー14人のうち、日本から情報通信研究機構(NICT)の渡辺聡一先生、名古屋工業大学の平田晃正先生の2人がメンバーとして就任しています。また、27人のSEGメンバーが選出されており、日本から金沢医科大学の小島正美先生、情報通信研究機構の和氣加奈子先生、情報通信研究機構の水野麻弥先生が就任しています。

新組織体制での活動

ICNIRPの役割

ICNIRPの任務は、文字通り、非電離放射線の健康への影響に関する指導と助言であり、非電離放射線へのばく露を制限する国際的ガイドラインを作成しています。
WHOが電磁界の健康リスク評価を行い、その評価結果を受けてICNIRPはこれまでの国際的なばく露ガイドラインの見直しを検討し、必要に応じてガイドラインを改訂しています。例えば、WHO国際電磁界プロジェクトのもとで、これまでに2度公式の健康リスク評価を行って、2006年に静電磁界の環境保健クライテリアNo.232を、2007年に超低周波電磁界の環境保健クライテリアNo.238を発刊してきました。これを受けてICNIRPは2009年に静電磁界を、2010年には超低周波電磁界に関するばく露ガイドラインを改定しました。これに対応して、我が国も経済産業省が2010年に出された新しい超低周波電磁界のばく露ガイドラインに基づき、電力設備に関する一般環境の磁界規制値(200マイクロテスラ)を導入しています。

このように、ICNIRPが提唱する国際的ガイドラインは各国の電磁界に関するリスク管理政策に大きな影響を持っていますので、本委員会メンバーのみならず、SEGメンバーも緊張感を持って真摯にその任務を果たす事が求められます。

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