これまで7回にわたって50ヘルツや60ヘルツと言った商用周波電磁界の健康影響について説明して来ましたが、次には、中間周波電磁界の健康影響について説明していきましょう。

刺激作用と熱作用

WHO国際EMFプロジェクトでは、中間周波電磁界とは300ヘルツ(Hz)から10メガヘルツ(MHz)の電磁界を指しています。人体が電磁界にばく露されると、体内に刺激作用と熱作用を引き起こすことが知られています。 商用周波電磁界や100キロヘルツ(kHz)以下の中間周波電磁界では主として刺激作用を、100キロヘルツ以上の中間周波電磁界や高周波電磁界では主として熱作用を引き起こします。

刺激作用とは、外部に非常に強い電磁界があると電磁誘導という現象によって、体内の神経や筋を刺激する電流や電荷を誘導する作用です。もともと人体には生理的な電流によって神経の興奮を伝えていますので、生理的な電流レベルを越えるような電流が外部の電磁界によって誘導されないように防護しなければなりません。 そこで国際的なばく露ガイドラインを作成する国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)では、誘導電流に最も敏感な閃光現象(目をつぶっていても閃光を感じると言った神経反応)を引き起こさないようにばく露制限値を設定しています。

100キロヘルツ以上の中間周波電磁界や高周波電磁界は、主として水の分子がエネルギーを吸収することで熱を発生させます。これを熱作用とよんでいます。低いレベルの高周波電磁界ばく露でもそれに見合った微量の熱を発生しますが、人体の生理的な温度調節によって気づかないうちに消去されてしまいます。しかし、非常に強い高周波電磁界にばく露されると生理的な体温調節機能では適応できず、体温が上昇します。ICNIRPでは、全身に体重1キログラム当たり4ワットの高周波電磁界をばく露した場合、動物の深部体温が1℃上昇すると動物の作業能率が下がるという実験結果から、これより50倍の安全率を設けて、体重1キログラム当たり0.08ワット(4ワット/50=0.08ワット)を一般環境のばく露制限値としています。理論的にはこの制限値ばく露で深部体温は0.02℃上昇する計算になりますが、上述のとおり、人体の生理的な温度調節によって気づかないうちに消去されてしまいます。

中間周波電磁界の健康影響

身のまわりにある中間周波電磁界を発生させる機器として最も代表的なのが、(今では殆ど見かけなくなりましたが)ブラウン管型の分厚いテレビやコンピュータモニター、電磁調理器(IH調理器やIH炊飯器)です。そのほか駅の改札口を出入りする際に使う非接触型のICカード、図書館や商店での電子商品監視(EAS)機器、電子タグ(RFID)機器などがあります。

中間周波電磁界の健康影響ですが、2005年のWHOの情報シートでは「ICNIRPのガイドラインのレベルを下回るばく露で中間周波電磁界が健康に対してリスクがあることを示唆する科学的根拠はありません。 しかし現在の知見の不確実性を解明するには、より一層質の高い研究が必要です。」と述べています。

2007年のWHOの環境保健クライテリア238では中間周波電磁界について、「健康リスク評価に必要とされる知識ベースの極少数しか集まっておらず、既存の研究の多くは結果が一貫していないので、更なる具体化が必要である。健康リスク評価のための十分な中間周波電磁界のデータベースを構成するための一般的な要件には、ばく露評価、疫学研究、ヒト実験室研究、動物および細胞(in vitro)研究が含まれる」とも述べています。

これらの見解の根拠となる疫学的研究はそのほとんどがコンピュータモニターの使用に伴う生殖機能や視覚器官への影響に焦点をあてたものです。 そして、コンピュータのモニターは非常に弱い中間周波電磁界しか発生しないので人の健康にとって脅威とはならず、生殖過程や胎児にも影響を及ぼすことはないとの見解をWHOは示しています。 しかし、この見解は、最近普及しているIH調理器に基づく研究ではないため、IH調理器を使用することに健康不安を覚えることも無理のないことです。

コンピュータモニターもIH調理器も共に20キロヘルツの中間周波電磁界を発生していますので、人への影響は基本的には同じであり、コンピュータモニターを対象とした研究結果があるので、その結果に差異はないと見なして良いと思います。しかし、厳格には両者でその波形が微妙に異なります。コンピュータモニターはノコギリ波で、IH調理器は正弦(サイン)波です。

国会でもIH調理器の健康影響について質疑されたこともあり、厚生労働省としてもこの問題を軽視できないと判断して、厚労科学研究費で調査を行うこととなりました。

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