目的

近年、従来型(機械式)の電力量計に代わって無線通信機能を備えたスマートメーターの導入が進み、現在ではほぼすべての電力量計がスマートメーターに取り替えられています。
一方で、スマートメーターからの高周波電磁界(電波)ばく露による健康影響を心配する声が一部にありますが、日本国内ではスマートメーターからの電波の測定報告は少ない状況です。そこで、電磁界情報センターは、国内で主に使用されている920 MHz帯スマートメーターからの電波を測定しました。
なお、本測定結果は、2024年10月の電気学会電磁環境研究会および2025年6月にフランス・レンヌで開催されたBioEM2025にて発表しています。

スマートメーターとは

スマートメーター(図1参照)は30分毎の電気使用量を計測し、遠隔での検針が可能な通信機能を備えた電力量計です。スマートメーターの通信には、図2に示すような隣接したスマートメーター同士がバケツリレーのようにコンセントレーター(集約装置)までの通信を行うマルチホップ通信方式が使われています。コンセントレーターに集められたデータは、通信事業者のネットワークなどを通じて、電力会社のデータ管理システムに送られます。

図1
図1 従来型(機械式)計器(左)とスマートメーター(右)
(出典:東京電力パワーグリッド ウェブサイト)
図2
図2 マルチホップ通信のイメージ
(出典:次世代スマートメーター制度検討会 第2回スマートメーター仕様検討ワーキンググループ資料)

測定場所

測定はスマートメーターの設置状況が異なる、戸建住宅(地点A)、各戸にスマートメーターを設置した集合住宅(地点B)、スマートメーターを1か所に集中させた集合住宅(地点C)の3地点で実施しました。
表1に測定場所とスマートメーターの設置状況を示します。

表1
表1 測定場所とスマートメーターの設置状況

測定方法

測定器は定期的に校正している電界強度測定器 SRM-3006 (Narda S.T.S. 社製(ドイツ))と三軸等方性電界プローブ 3502/01 [測定可能周波数:420 MHz(メガヘルツ)~6 GHz(ギガヘルツ)]を使用しました。
プローブの固定には電波の測定に影響が小さい塩化ビニル樹脂製の架台を作成し、使用しました。プローブはスマートメーターと同じ地上高で、スマートメーター正面とプローブ先端の距離が0.1mとなるように配置し測定しました。測定器および測定時の設置状況を図3に示します。
スマートメーターが使用している周波数帯(920~930 MHz)における電界強度を測定しました。また、電波信号の発生回数と発生間隔を30分間にわたって記録するとともに1回当たりの信号継続時間についても測定しました。

図3
図3 測定器および測定時の設置状況

測定結果

電界強度

図4にスマートメーターから発生する電波の電界強度を示します。スマートメーターからの電波の電界強度の測定値は0.02~0.15 V/mであり、総務省が定める電波防護指針の一般環境における電磁界強度指針値(920 MHz:48 V/m)を下回っていることが確認できました。

図4
図4 電界強度の測定値(6分間平均値)

30分間の信号発生回数および信号継続時間

地点Aおよび地点Bにおける30分間の信号発生回数および発生間隔を図5に示します。データの記録時間は連続30分以上で測定を行いました。地点Aでは30分間に17回信号が発生しており、地点Bでは30分間に23回発生していることが確認できました。信号発生の間隔は約2秒から4分と不規則でした。

図5
図5 30分間の信号発生回数および発生間隔

また、信号継続時間と測定時間中における各継続時間ごとの検出回数を表2に示します。信号継続時間は5つのパターンに分類でき、そのうち最も検出回数の多かった継続時間13 ms(ミリ秒)の波形を図6に示します。 信号継続時間は通信データ量に左右されるため、スマートメーターは都度、異なるデータ量を通信していることが想定されます。

表2
表2 信号継続時間と検出回数
図6
図6 信号継続時間例(13ms)

金属製扉の有無の影響

メーターボックス内にスマートメーターが設置されている地点B、地点Cにおいて、金属製扉を閉めた状態と開けた状態の測定値(最大値)の比較を行いました。なお、地点Bは、メーターボックス前面に金属製扉が設置されており、扉面以外はコンクリートで囲われています。地点Cは全面が金属で囲われており、金属製扉にはスマートメーターの表示部が見えるように扉にガラス製の窓が設置されています。
測定結果と測定状況を図7、図8に示します。地点B、地点Cいずれの場所においても、金属製扉を閉めた状態の方が開けた状態に比べ電界強度が小さくなることが確認できました。

図7
図7 金属製扉の影響調査結果(地点B)
図8
図8 金属製扉の影響調査結果(地点C)

居住空間における電界強度

地点Bにおいて、玄関外の通路および日常生活を行う居住空間(玄関・居室中央)におけるスマートメーターからの電波の電界強度を測定しました。また、同じ場所で携帯電話に使用される電波の周波数帯(基地局からの電波と想定)の電界強度を測定しました。
各々の測定結果を図9に示します。居住空間における電界強度の測定値は、いずれもスマートメーター正面から0.1mでの測定値に比べ小さく、いずれも電波防護指針の一般環境の電磁界強度指針値(920 MHz:48 V/m)より小さいことが確認できました。また、スマートメーターからの電波の電界強度の測定値は、携帯電話基地局から電波と比べると同等か小さいことが確認できました。

図9
図9 居住空間における電波の電界強度の測定結果

まとめ

oスマートメーターから発生する電波の電界強度の測定値は、0.02~0.15 V/mであり、総務省が定める電波防護指針の一般環境の電磁界強度指針値(920 MHzでは48 V/m)を下回っていました。
o居住空間においては、スマートメーターからの電波は携帯電話基地局からの電波と同等か小さいことが確認できました。
oスマートメーターがメーターボックス内に設置されている場合、メーターボックスの金属製扉を閉めることにより、測定される電界強度が小さくなることが確認できました。
oスマートメーターからの信号は、30分間に複数回(地点A:17回、地点B:23回)不規則な間隔で発生していました。また、各信号の継続時間は都度異なっており、通信のたびにデータ量が異なっていることが想定されました。

電磁界情報センターでは、電磁波(電磁界)への不安や疑問に対して正確な情報をお伝えし、
多くの方々に電磁波に対する理解を深めていただきたいと考えています。

情報発信

当センターでは皆様に正しい情報をお届けするためにニューズレターの発行やメールマガジンなどを配信しています。

情報発信
情報発信へ

お問い合わせ

電磁波や当センターの活動に関するお問い合わせ・ご質問・ご要望を受け付けております。

お問い合わせ
お問い合わせへ