超低周波磁界ばく露と小児白血病発症に関する研究提言

       2012.11.1掲載

『低レベルの超低周波磁界ばく露と小児白血病発症に関する研究提言について』


  国際的なばく露防護ガイドライン値から較べればかなり低いものの、生活環境レベルの超低周波磁界ばく露が小児白血病を招くのではないかとの懸念は今日まで 続いています。その様な生活環境(0.4マイクロテスラ以上)で育っている小児は国民の0.8%と推定されています。一方、国際的なばく露ガイドラインの 値は200マイクロテスラです。2007年に出されたWHO(世界保健機関)の環境保健クライテリアやファクトシートでは低いレベルの超低周波磁界ばく露 が小児白血病を招く関連性を示す、0.4マイクロテスラを国のばく露基準にすることを反対していますし、2010年にだされたICNIRP(国際非電離放 射線防護委員会)のガイドラインでも同様の見解を示しています。それと同時にWHOは低いレベルの超低周波磁界ばく露と小児白血病発症について、今後も引 き続き研究を行うよう各国政府に提言しています。

 我が国でも2008年6月に経済産業省電力安全小委員会の下に置かれた電力設備電磁界対策 ワーキンググループの報告書において、超低周波磁界ばく露の長期的健康影響への政策提言として、①更なる研究プログラムの推進、②リスクコミュニケーショ ンの充実、③ばく露低減のための低費用の方策が挙げられていた。特に①については、「磁界曝露と健康影響との関係に不確かさが残っていることから、引き続 き、その不確かさを低減させるため、産学官が協力して研究を推進すべきである。しかしながら、従来の動物・細胞実験による結果及び、磁界と小児白血病に関 する疫学研究の問題点から、超低周波磁界による小児白血病誘発への影響評価研究方法には改善すべき点があると考えられ、これからは従来とは異なるアプロー チを試みることが必要である。具体的な研究テーマについては、今後、工学、医学・生物学等各分野の有識者から広く意見を聞くことが必要と考える。磁界に関 係する研究を適切に進めるためには、現在の各省縦割りで個々の事業者を規制する視点だけでは限界があり、関係各省が連携して電磁界問題全体を俯瞰しつつ必 要な研究分野・テーマを見極めるなど、新たに研究に取り組む仕組みを構築することが必要と考える。」と述べています。しかし、この研究推進に関する政策提 言が具体化することもなく今日に至っています。

 電磁界情報センターは上記政策提言②によって2008年に創設された組織です。多くの国民 が磁界と小児白血病との関連性に不安を抱いていますし、この問題を科学的に解明することは非常に大切であると考えています。私達は2011年に、「小児白 血病!これからの研究をどうするか」をテーマに本研究に造詣の深い研究者を招いて電磁界フォーラムを開催しまし、そこで、小児白血病に関する研究の現状と 今後の課題について理解を深めました。

 このフォーラムでの討議を踏まえ、更には超低周波磁界ばく露と小児白血病発症の可能性に関する研究に造詣の深い専門家からの意見を集約し、この問題の現状分析と今後の研究への共同提言を行いました。

 これは、特定の研究領域、研究機関、研究者に向けた内容ではなく、今後の研究のあり方を提言したものです。関係諸機関がこの問題について新たな研究計画を立案する際の参考に資すれば幸いです。

  最後に、私達の研究提言に対して、日本医学会会長の高久史麿先生、日本血液学会理事長の金倉譲先生、日本小児血液がん学会理事長の石井榮一先生、日本衛生 学会理事長の遠山千春先生、日本公衆衛生学会理事長の大井田隆先生、上記電力設備電磁界対策ワーキンググループ主査の横山明彦先生から、推薦文を拝受しまし た。ここに深くお礼申し上げます。

 平成24年11月
電 磁 界 情 報 セ ン タ ー 所 長
WHO国際電磁界プロジェクト国際諮問委員会委員
 大久保 千代次

  ・「商用周波磁界ばく露と小児白血病発症の可能性に関する研究提言」 の閲覧は こちら から
      提案者(アイウエオ順)
         大久保 千代次(電気安全環境研究所 電磁界情報センター所長)
         中園 聡(電力中央研究所 上席研究員 )
         原 純一( 大阪市立総合医療センター 副院長)
         宮越 順二(京都大学 教授)
         山口 直人(東京女子医科大学 教授)

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