欧州委員会が「欧州市民イニシアティブ」に5G活動家団体を登録

2021.10.13掲載

欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会は2021年10月7日付で、活動家団体「ストップ(((5G)))‐接続を維持しつつ防護を(Stop (((5G))) - Stay Connected but Protected)」を「欧州市民イニシアティブ(ECI)」(後述)として登録したと発表しました。同団体の代表者らは欧州委員会に対し、高周波電磁界およびマイクロ波放射によって生じると疑われる特定のリスクから全ての生命をより防護し、第5世代移動通信(5G)および関連するデジタル化によって生じると疑われるその他の特定の環境へのインパクトから防護し、サイバー犯罪などからの効果的な防護を担保するための法的行為を提案するよう要求しています。

欧州委員会による同団体の登録決定は法的な性質のものであり、欧州委員会の最終的な法的および政治的結論、ならびに同団体が必要な支持(後述)を得た場合の行動に予断を与えるものではありません。

同団体は関連する法律において確立された正式な条件(後述)を満たしていることから、欧州委員会は同団体が法的に許容されると見なしました。欧州委員会はこの段階では同団体の提案の内容を分析していません。

欧州委員会が同団体を登録したということは、欧州委員会が同団体の主張の事実関係の正確性を確認したということを意味するものではなく、それ(主張の事実関係の正確性の確認)は同団体の代表者らに責任があります。実際のところ、同団体の主張の多くは、欧州委員会が入手可能な科学的証拠や、世界保健機関(WHO)に電磁界の健康リスク評価を義務付けられている国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)の評価と矛盾しています。

同団体の主張は、単に同団体の代表者らの見解を表明したに過ぎず、欧州委員会の見解を反映していると見なすことはできません。

今回の登録後、同団体の代表者らは署名募集を開始することができます。同団体が1年以内にEU加盟国のうち少なくとも7か国で100万筆の支持を得ることができれば、欧州委員会はその主張を詳細に調査し、これに対応しなければなりません。欧州委員会は、その要求に従うかどうかを決定することができ、いずれの場合もその理由を説明することが求められます。

※背景情報:
「欧州市民イニシアティブ(ECI)」は、EUにおいて課題設定のための手段を市民に与えるものとして、リスボン条約[正式名称:欧州連合条約および欧州共同体設立条約を改正するリスボン条約]に導入され、2012年4月に公式に開始されました。ECIとして正式に登録された団体は、欧州委員会に対して当該分野での法的行為を提案するよう要請するため、1年以内にEU加盟国のうち少なくとも7か国で100万筆の支持を求めることができます。ECIとして認められる条件は、(1) 団体が提案した行動が明らかに、法的行為を提案する欧州委員会の権限の枠組みから外れていないこと、(2) それが明らかに虐待的でも、軽薄でも、または嫌悪するものでもないこと、(3) それが明らかにEUの価値に反するものではないことです。ECIの導入以来、欧州委員会は109件の要請を受け、そのうち84件が登録されています。

欧州委員会は、公衆衛生の防護は最も重要であり、全ての発議権において考慮されていると強調しています。EUは、5Gを含む電磁界のばく露限度については特に、最新の、絶えず見直されている科学的証拠に基づく、十分な安全上の余裕をもった最大ばく露限度を推奨することで、プレコーショナリアプローチ[念のための対策]を講じています。このことは、一般公衆に対するEUのばく露限度は常に、健康に影響があると国際的な科学的証拠が示唆しているものよりも、少なくとも50分の1低いということを意味しています。

加えて、欧州委員会は、政策提案のために最新の科学的証拠を用いることに専心しています。欧州委員会は2021年6月、「健康・環境・新興リスクについての科学委員会(SCHEER)」に対し、特にICNIRPの2020年の改定版ガイドラインに照らして、EUの現行の法律(即ち、理事会勧告1999/519/ECおよび指令2013/35/EU)の技術的改定の必要性についての科学的意見書の提出を義務付けました。SCHEERでは、独立した科学的アドバイザーが適宜、入手可能な全ての証拠を評価し、検討します。

今回のECI登録についての情報は、以下のURLから入手可能です。
https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/ip_21_4995


[JEICによる注記]
EUでは、一般公衆の電磁界ばく露制限については、「理事会勧告1999/519/EC」が1999年に制定されています。同勧告はEU加盟各国に対し、ICNIRPの1998年のガイドライン(0 Hzから300 GHzまで)に基づいたばく露限度を国内法に導入することを推奨していますが、法的拘束力はありません。幾つかの加盟国は、自国の限度は理事会勧告よりも低いレベルとすることが望ましいという決定を下しています。これについて欧州委員会は、「保健防護政策は加盟国の権限であり、加盟国にはより厳格な要求事項を採用する自由があります。欧州委員会は、現在推奨されている限度が公衆衛生の防護に対して適切であるということを、今でも確信しています」との見解を示しています。

また、労働者の電磁界ばく露制限については、「指令2013/35/EU」が2013年に制定されています。同指令はEU加盟各国に対し、ICNIRPの1998年のガイドラインの100 kHz以上の部分、2009年のガイドライン(静磁界)および2010年のガイドライン(1 Hzから100 kHzまで)に基づいたばく露限度を国内法に導入することを義務付けていて、加盟各国は国内法の制定を完了しています。

関連情報:
「欧州委員会が5Gについてのよくある質問と回答をウェブサイトに掲載」(2020.6.8掲載)
https://www.jeic-emf.jp/whats_new/14437.html 

「2013/35/EU 物理的作用因子(電磁界)に起因するリスクへの労働者のばく露についての健康および安全の最低要求事項に関する(指令)」
https://www.jeic-emf.jp/International/European_Union/EU_Directive_Recommendation/Directive/2013%252F35%252FEU.html