河北新報朝刊
「<電磁過敏症>日本人の3.0~4.6%に症状」(補足説明)

2016年8月28日記事

2016年8月28日の河北新報朝刊に掲載された「<電磁過敏症> 日本人の3.0~4.6%に症状」では、北條祥子教授を主任研究者とする早稲田大学応用脳科学研究所の研究グループが国際学術誌「バイオエレクトロマグネティクス」の9月号(Biolectromagnetics2016Sep; 37(6):353-72) に掲載した「日本人向けの電磁過敏症質問票の開発および評価」の内容を紹介しています。 その最後で、“電磁過敏症は発症の仕組みがよく分かっておらず、診断基準も定まっていない。 北條名誉教授は、「電化製品のあふれた現代では誰がいつ発症してもおかしくない。アレルギーのように患者が急増しないうちに何らかの予防策を提案できるよう、さらに調査を進める」と話す”と紹介しています。

補足

記載された内容そのものに歪曲された情報はありませんが、 WHO(世界保健機関)をはじめ、EUや世界各国の電磁波(電磁界)の健康リスク評価を行っている専門機関は、 電磁過敏症の発症への電磁波の関わりを否定しています。その事実に一言も触れない上で、北條教授の個人的見解を示すことで記事を終えています。 結果として、あたかも電磁過敏症が電磁波によって引き起こされるとの印象を読者に与えています。 電磁過敏症に関する記事に、WHOの見解を紹介することがバランスの取れた報道と言えます。

以下に、電磁過敏症と電磁界に関する、WHO、EU、スイス、オーストラリアなどの公的機関の見解を紹介致します。

WHOの電磁過敏症に関する見解を示すファクトシート296では、「 電磁過敏症には明確な診断基準がなく、電磁過敏症の症状を電磁界ばく露と結び付ける科学的根拠はありません。」と述べています。その詳細は、以下のURLから入手できます。

欧州科学技術研究協力機構(COST)Action BM0704:新興のEMF技術と健康リスク管理より、2011年に出されたファクトシート:電磁界を原因と考える本態性環境不耐症(IEI-EMF)または“ 電磁過敏症”」の中では、「EMF ばく露と症状との関連は確立されておらず、感知および生理学的反応に関する研究は EMFと症状の出現の因果 関係を裏付ける証拠を提供していません。EMFばく露と症状の出現の因果関係を示す科学的証拠がないため、“電磁過敏症”の診断基準はなく、これを医学的状態として認めた EU 諸国は 1つもありません。」と述べています。その詳細は、以下のURLから入手できます。

欧州連合(EU:European Union)における政策執行機関である欧州委員会(EC:European Commission)が諮問したSCENHIR:Scientific Committee on Emerging and Newly Identified Health Risks(新興・新規に同定された健康リスクについての科学委員会)が2015年に出した「電磁界へのばく露の潜在的な健康影響についてのよくある質問」の中では、「電磁過敏症は、科学的専門用語では「EMF に起因すると思う特発性環境不耐症」と呼ばれます。ある人々は、痛み、頭痛、吐き気、めまい、疲労感、皮膚の刺激感などの症状を自己申告し、それらの症状がEMF ばく露に関連するかのように考えますが、研究は一貫して、そのような症状とEMF ばく露との間に因果関係がないことを証明しています。」と述べています。その原文と日本語訳は、それぞれ以下のURLから確認できますが、原文は現在の欧州委員会のウェブサイトでは、掲載されていません。

スイス連邦環境省(BAFU)は、2012年「電磁過敏症−2011年末現在の科学研究の評価−」という報告書(ドイツ語)を公表しており、その 結論として、「現在までのところ、電磁過敏症の承認された診断クライテリアはなく、また日常生活での電磁界ばく露が直接の原因となって、電磁過敏症の人が苦しんでいるような影響が生じることを示す証拠も何も見つかっていない」と述べています。その詳細は以下のURLで入手できます。

オーストラリア放射線防護・原子力安全庁(ARPANSA)は、2015年に電磁過敏症(EHS)に関するファクトシートを発表し、 その中で「症状は現実にあるもので、影響が表れている人にとっては障害となる影響となり得ますが、 その一方、電磁過敏症には明確な診断基準がなく、電磁界ばく露が原因であることを示す証拠をこれまでに科学は提供したことがありません。」と述べています。 その原文と日本語訳は、以下のURLからそれぞれ入手できます。

なお、当センターは、今回の記事の内容に関して、更に正確な内容をお伝えすべく、自主的に補足することといたしました。

以 上

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