国際がん研究機関(IARC)がモノグラフ前文改定についての諮問グループによる報告書を発表

2019.9.12掲載
2019.9.19更新

国際がん研究機関(IARC)は、2019年1月に「ヒトに対する発がんハザードの同定についてのIARCモノグラフ」の前文(Preamble)を改定しました。これに関連して、IARCは2019年9月11日付で、前文改定を勧告した諮問グループによる約400ページの報告書を発表しました。また同日、諮問グループによるこの報告書の解説論文が、査読誌Journal of the National Cancer Instituteに掲載されました。

この論文は、前文改定版の要旨を以下のように解説しています。
「今回の前文改定版には、体系的レビュー方法の強化;発がん因子の重要な特徴に基づくメカニズム的証拠をより強調すること;疫学研究の批判的評価において、ばく露評価方法を含む質と有益性をより考慮すること;異なる証拠の流れに対する評価クライテリアのハーモナイゼーションの改善;全体的な評価に達するための、ヒトにおけるがん・実験動物におけるがん・メカニズムについての証拠を統合する単一ステップのプロセス、が含まれています。全体として、今回の前文改定版は、がん予防において必要不可欠な第一歩である発がんハザードの同定のための、より強く、より透明性のある方法を支えています。」
諮問グループによる報告書、ならびに解説論文の原文は、以下のURLから無料でダウンロードできます。
https://www.iarc.fr/news-events/the-iarc-monographs-updated-procedures-for-modern-and-transparent-evidence-synthesis-in-cancer-hazard-identification/

[JEICによる注記]

今回の前文改定版では、諮問グループの勧告を受けて、従来版のタイトル「ヒトに対する発がんリスクの評価についてのIARCモノグラフ」が「ヒトに対する発がんハザードの同定についてのIARCモノグラフ」に変更されました。これについて諮問グループは報告書で次のように説明しています。
「諮問グループは、『ハザード』と『リスク』の区別について検討しました。『ハザード』は、ある作用因子に発がん性があるという証拠の強さを意味するのに対し、『リスク』は、所与のばく露ががんに至る蓋然性(probability)を意味します。IARCが一般人やニュースメディアのために、この区別を明確にすることは重要です。諮問グループは、発がんハザードの同定におけるIARCの役割が公衆衛生にとって極めて重要であるという点を強調します。」

また、今回の改定版では、従来のグループ4「ヒトに対して恐らく発がん性はない」という分類が廃止されました。これについて諮問グループは次のように説明しています。
「諮問グループは、グループ4分類に関して一般公衆に誤解があることに留意しました。IARCモノグラフの適用範囲は、ヒトにおけるがんのリスクを高める可能性のある作用因子を同定することであり、モノグラフ・プログラムでは、ヒトがそれにばく露されるという証拠があり、それによる発がん性の何らかの証拠または疑いがある場合にのみ、その作用因子を(レビュー対象に)選択しています。発がん性を疑う証拠がない新たな作用因子をレビューすることは、モノグラフ・プログラムの適用範囲外であり、また実際に、レビュー対象の作用因子についてはほぼ大抵、潜在的な発がんハザードを示す何らかのデータがあります。この理由により、諮問グループはグループ3(ヒトに対する発がん性を分類できない)とグループ4を統合することを勧告しました。また、諮問グループは今後の(作用因子の発がん性分類を評価する)作業グループに対し、一連の証拠によって是認される場合に『ヒトに対しておそらく発がん性はない』という文言を追加するよう奨励しました。作業グループは、複数の良好にデザインされた疫学研究で、レビュー対象の作用因子とヒトにおけるがんとの間に正の関連が認められない場合、その文言を述べても良いでしょう。但し、疫学研究に基づいて、ヒトに対する潜在的な発がんハザードがないという決定的な評価を下すには、入手可能な一連の研究で、全ての影響を受けやすい人口集団、ばく露状況、がんの結果、関連する変数が適切に捕捉されているという保証が必要であり、実際にはそのような保証を得ることはほとんど不可能です。」

関連情報:

「IARCがモノグラフ前文を改正へ」(2018.2.14掲載)
https://www.jeic-emf.jp/academic/info/6085.html

「国際がん研究機関(IARC)がモノグラフ前文を改定」(2019.1.28 掲載)
https://test.jeic-emf.jp/whats_new/6585.html

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