欧州議会の電磁界関連決議(2009年4月2日)

欧州議会は、2009年4月2日、「電磁界に関連する健康上の懸念」についての決議を、賛成559票、反対22票、棄権8票で採択しました。

この決議は、電磁界ばく露による健康影響について一般の人々の間に懸念が高まっていることから、欧州議会の環境・公衆衛生・食品安全(ENVI)委員会のフレデリック・リー議員(ベルギー選出)が文書作成、立案し、同委員会での審議を経て提出されたものです。

今回の決議は、EUの行政執行機関である欧州委員会に対し、EU理事会勧告(1999/519/EC)の科学的根拠とその妥当性を見直し、その結果を議会に報告することなどを要求しています。この任務を「新興および新規に同定される健康リスクに関する科学委員会(Scientific Committee on Emerging and Newly Identified Health Risks: SCENIHR)」が実施すること、携帯電話中継局や高圧電力線等の設置の際には利害関係者間で協議を行うこと、電磁波を放射する設備を学校や医療機関等から離して設置すること、市民が電磁界ばく露の健康影響を回避するための方策についての信頼できる情報を容易に入手できるように改善することといった要求などが盛り込まれています。

ただし、この決議に法的拘束力はなく、EU理事会がこの決議にどのように対応するのかは現時点では不明です。 

この4月2日付の決議と、これに関連する報道発表の原文は、次のURLから入手可能です。また、欧州議会決議については、電磁界情報データベースからも入手可能です。
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欧州議会決議

European Parliament. Texts adopted. Thursday, 2 April 2009. Health concerns associated with electromagnetic fields. P6_TA-PROV (2009) 0216. European Parliament resolution of 2 April 2009 on health concerns associated with electromagnetic fields (2008/2211(INI)). http://www.europarl.europa.eu/sides/getDoc.do?pubRef=-//EP//TEXT+TA+P6-TA-2009-0216+0+DOC+XML+V0//EN

報道発表

European Parliament. Press Release. Avoiding potential health risks of electromagnetic fields.
http://www.europarl.europa.eu/news/expert/infopress_page/
066-53234-091-04-14-911-20090401IPR53233-01-04-2009-2009-false/default_en.htm

報道発表の内容は以下の通りです。以下の文書の日本語訳は、電磁界情報センターにて作成したものです。日本語訳にあたっては、原文を忠実に翻訳しましたが、疑問や不明な点については、原文をご確認頂くようお願いします。
 なお、正式文書は上記のURLから入手できます(英語版)。

欧州議会 2009年4月2日付報道発表

電磁界の潜在的リスクの回避

欧州議会で採択された報告によると、アンテナ、携帯電話の中継塔、及びその他電磁波を放射する機器は、学校や保健施設から一定の距離をおいて設置すべきです。欧州委員会は、十分に情報を提供されていないと感じている市民に対し、電磁界ばく露の影響について、より信頼できる情報を利用できるようにすべきです。この報告は、賛成559票、反対22票、棄権8票で採択されました。

この報告は、無線技術及びその他電磁波を放射する技術の幅広い利用と、それらが社会にもたらす便益を認めていますが、それらの“可能性のある健康リスクについての継続的な不確実性”に対する懸念についても喚起しています。特に、子供や若い人々の電磁界ばく露が懸念されています。このため欧州議会議員(MEP)らは、住民や消費者に対し、より厳格な規制と防護を求めています。

“機器の最適配置”による欧州市民に対するより良い防護

この報告は、フレデリック・リー(欧州自由民主同盟(ALDE)、ベルギー)が立案したもので、産業界の利害関係者は、生活空間と送信アンテナの向きとの関係や、敷地と送信機との間の距離を含む、幾つかの安全上の要因に既に影響力を与えることができる、としています。産業界の関係者には、近くの住民により良い防護を与え、“位置が悪い中継塔や送信設備の増殖”を防止するため、この力を行使することが奨励されています。

健康リスクと訴訟を最小限にするため、産業界の関係者、公的機関、住民団体との間で、アンテナ、携帯電話中継塔や高圧電力線の設置について協議すべきです。これは、電磁界を放射する機器を学校、託児所、老人ホームや医療機関から離しておくことを保証することにもなります。加えて、議会は、携帯電話事業者は“公衆の電磁界ばく露”を低減するため、社会基盤を共有するための協議をすべきと勧告しています。

信頼できる情報へのアクセスの向上

最近公表されたユーロバロメーター(Eurobarometer Study)研究は、“大多数の市民は、電磁界から自分たちを防護するための方策に関する情報を公的機関が充分に提供しているとは感じていない”と示唆しています。このことを考慮して、この報告は、信頼できる情報へのEU市民のアクセスを改善するための幾つかの提案を示しています。これらの提案には、電磁界送信機器にばく露される地域を示す地図をインターネット上で利用できるようにすることが含まれています。これに合わせて、欧州委員会は“EUにおける電磁放射のレベル”とその発生源についての年次報告を作成すべきです。

欧州議会議員らはまた、無線で操作される全ての機器に送信電力を示すラベル貼付要件を課すように欧州電気標準化委員会(CENELEC)の技術規格を修正することにより、消費者向け情報を改善することも求めています。

電磁界限度とInterphone研究の知見のレビュー

欧州委員会は、“理事会勧告1999/519/ECに記されている電磁界限度値の科学的根拠と妥当性”を見直し、それを議会に報告するよう求められています。これは、多くの加盟国がEUに要求されているよりも大幅に厳しい規制を自発的に導入している、という事実を考慮したものです。

この報告はまた、2000年に開始された、携帯電話と特定の種類のがん(脳、聴覚、耳下腺の腫瘍を含む)との間の相関を調べるための幅広い科学的プロジェクトである、Interphone研究を引き合いに出しています。その結果の発表は2006年に予想されていましたが、繰り返し延期されています。欧州議会は特に、“子供が懸念されている以上、携帯電話は合理的な限度を超えて使用すべきではありません”という、Interphone研究のコーディネーターであるエリザベス・カーディスからの“用心のためのアピール”を懸念しています。

この報告はそのため、同研究に多大な資金的貢献をしてきた欧州委員会に対し、同プロジェクトの責任者に“なぜ決定的な知見が公表されていないのか”を問い質すよう求めています。回答が得られたら、議会及び加盟各国に遅滞なく情報が提供されるべきです。

子供と若い人々

10~20歳の子供と若い人々は最大の携帯電話ユーザーであり、“特に、脳が依然として発育中である若い人々について”可能性のある健康リスクに関する不確実性が残っているので、議会は彼らを懸念しています。この報告は、携帯電話の危険性についての認識を高めるため、また、ハンズフリー・キットを利用する、通話時間を短くする、電源を切るといった、良い携帯電話の利用方法を奨励するため、“電磁界についての研究に用途を指定された欧州共同体の資金を、部分的に認識向上キャンペーンに振り向ける”ことを提案しています。

“子供専用に設計された携帯電話の販売、または10歳代を対象とした無料通話時間パッケージ”を含む、電話事業者による積極的なマーケティング・キャンペーンも、議員らに厳しく非難されています。

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