5Gモバイルネットワークと健康
5Gとは何ですか?
5G(第5世代移動通信システム)は、2019年に本格的に導入された最新の移動体無線技術です。5Gは通信性能を向上させ、eヘルス(遠隔医療、遠隔観察、遠隔手術)の強化を含む幅広い新しい用途が期待されています。
5Gと従来の技術との主な違いは何ですか?
5Gは、通信規格の進化を意味します。より高いパフォーマンスを実現するために、5Gは3.5GHz付近から数十GHzまでのより高い周波数帯域へと拡張されます。携帯電話ネットワークではこれまで使用されてこなかった高い周波数帯ですが、ポイントツーポイント通信やセキュリティチェック用のボディスキャナーなど、他の用途では一般的に使用されています。5Gネットワークは、これらの高い周波数帯において、より多くの基地局と接続された機器を使用します。5Gでは、ビームフォーミングアンテナをさらに採用することで、現在の基地局アンテナのように広範囲に信号を拡散させるのではなく、使用中の機器に向けてより効率的に信号を集中させることになります。
ばく露レベル
現在、3.5GHz周辺の5Gインフラからのばく露は、既存の携帯電話基地局からのばく露と同程度です。5Gアンテナからの多重ビームを使用することで、ユーザーの位置や使用方法に応じてばく露がより変動する可能性があります。5G技術は現在、展開の初期段階にあるため、電波へのばく露の変動の程度については、まだ調査中です。
5Gからの潜在的健康影響は何ですか?
これまでに膨大な研究が実施されていますが、無線技術へのばく露と健康への有害な影響との間に因果関係があるとは確認されていません。健康に関連した結論は、電波全体にわたって実施されてきた研究から導き出されていますが、これまでのところ、5Gに用いられる周波数については、限られた研究しか行われていません。
電波と人体との相互作用のメカニズムは、主に組織の過熱です。現在の技術から生じる電波ばく露レベルは、人体に無視しうる程度の温度上昇しか生じません。
周波数が高いほど、身体組織への浸透度は浅くなり、エネルギー吸収は身体の表面(皮膚や眼球)に限定されていきます。ばく露全体が国際的なガイドラインを下回る限り、公衆衛生に対する結果が生じるとは考えられません。
国際的なばく露ガイドラインとは何ですか?
電磁界に関するばく露ガイドラインは、2つの国際機関によって作成されています。現在、多くの国が以下の機関が推奨するガイドラインに従っています。
- 国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)
- 米国電気電子学会(IEEE)の国際電磁安全委員会(ICES)
これらのガイドラインは特定の技術に限定されたものではありません。議論の対象となっている5Gの周波数を含む、最大300GHzまでの無線周波数を対象としています。
WHOは何をしているのですか?
世界保健機関(WHO)は、5Gを含むすべての無線周波数帯域を対象に、無線周波数へのばく露による健康リスク評価を実施しており、2022年までに公表する予定です。
WHOは、新技術である5Gの展開の中で、より多くの公衆衛生関連データが得られるのに合わせて、5Gへのばく露による潜在的な健康リスクに関する科学的証拠を評価します。
WHOは1996年に国際電磁界(EMF)プロジェクトを設立しました。このプロジェクトでは、0~300GHzの周波数帯における電界および磁界へのばく露による健康への影響を調査し、各国当局に電磁界ばく露防護に関する助言を行っています。
WHOは、移動体通信のあらゆる側面における長期的な健康への影響に関するさらなる研究を提唱しています。WHOは関連する研究の優先事項を特定し、促進しています。また、健康と移動体通信に関する理解を深めるために、一般向けの情報資料を作成し、科学者、政府、市民間の対話を促進しています。