バイオイニシアチブ(BioInitiative)報告

2007年8月31日、欧米の一部の研究者や市民団体の代表等で構成されるバイオイニシアチブワーキンググループ(BioInitiative Working Group)が、電磁界に対する生物学的な影響を評価した「バイオイニシアチブ報告」をインターネットのウェブサイト上で発表しました。その報告書では、ばく露制限値について、現行よりさらに厳しい数値で一般公衆を防護する必要があることが指摘されています。

2006年6月11-15日にメキシコ・カンクン市で開催された第28回生体電磁気学会(BioelectromagneticsSociety:BEMS)の年次大会において「電磁界、研究とプレコーション(Precautionary)原則」をテーマにしたシンポジウムが開催されました。シンポジウムはコロンビア大学のブランク(Blank)教授とウイーン医科大学のクンディ(Kundi)教授が組織しました。このシンポジウムには下表の3名の講演者が名前を連ねており、これをキックオフとして14名からなるバイオイニシアチブワーキンググループが構成され、バイオイニシアチブ報告「BioInitiative Report : A Rational for a Biologically-based Public Exposure Standards for Electromagnetic Fields (ELF and RF)(電磁界(超低周波および高周波)に対する生物学に基づく公衆ばく露スタンダードに対する根拠)」が取りまとめられ、組織委員会委員のカーペンター(David Carpenter)氏とセージ(Cindy Sage)氏の両名を編著者として2007年8月31日にインターネットウェブサイトに文書として公表されました。

バイオイニシアチブのキックオフ・シンポジウムの演題

電磁界とプレコーション(Precautionary)原則の科学的視点 レバ・グッドマン
(コロンビア大学)
近年、プレコ-ション(Precautionary)原則はELFとRF/MWばく露発生源と、如何に関与してきたか シンディ・セージ
(コンサルタント)
ELFとRF電磁界の疫学研究-がんとの関連性に因果関係を示す説明が存在するのか ミハエル・クンディ
ハンス・ピータ・ヒュッター
(ウイーン医科大学)

バイオイニシアチブ報告では、「携帯電話や基地局およびその他の発生源からの電磁界ばく露に関連するがんや神経的な疾患を防止するため、よりよい公衆衛生計画の立案が必要な時である。我々は、従来通りの方法は受け入れないことを、公衆や意志決定者に教育する必要がある。」と主張しており、この見解を支持する証拠が提示されています。また、この報告では、国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)のガイドラインや米国電気電子工学会(IEEE)の規格による現行のスタンダードでは公衆を防護できないとしています。この報告は合計21章で構成され、17章までが骨格を成しており、18章以下は、執筆者氏名・所属、専門用語の解説、環境および職業環境での電磁界レベルを例示しています。

バイオイニシアチブ(BioInitiative)報告に対する諸機関のコメント

バイオイニシアチブ報告は国際的な注目を浴びましたが、その後、欧州環境庁を始めとした様々な機関や組織がコメントを発表しました。その中には、この報告の内容を積極的に取り上げるべきであるとのコメントもあれば、この報告で述べられている評価手順、評価結果および政策への勧告などについての疑問を述べたコメントも見られます。

以下に、これまでバイオイニシアチブ報告に対して出されたコメントを記載します。

1)欧州環境庁(EEA)

欧州環境庁(EEA)は、2007年9月17日に「日常の機器からの電磁界リスクが評価される」を公表しました。主な内容は以下の通りです。

電磁界がヒトの健康に及ぼす影響についての懸念を提起する新たな報告が、携帯電話、送電線、およびその他の多くの日常生活における発生源からの電磁波を規制するためのより厳しい安全基準を求めている。バイオイニシアチブ報告は、国際的な科学者、研究者、公衆衛生政策専門家らで構成されるバイオイニシアチブワーキンググループが編纂した。EEA は、2001 年に出版された研究「Late lessons from early warnings: the precautionary principle1896-2000」から引用して、この新たな報告の中の1章に貢献している。

EEAの研究は、アスベスト、ベンゼン、PCB といった環境ハザードに関する歴史(潜在的有害性についての科学に基づく早期警戒から、その後のプレコーション的および防護的措置に至る)についてレビューしている。たばこの煙および有鉛ガソリンに関する事例がそれに続いている。

EEAは電磁界に関する専門性は特に有していないが、この「遅ればせの教訓」における公的ハザード分析の事例研究は、長期ばく露による有害性について「説得力ある」証拠と、その有害性がどのように生じるかに関する生物学的理解が得られる前に、有害なばく露が広まってしまう可能性があることを示している。

EEA上級ディレクターのマックグレード(McGlade) 教授は、過去にはプレコーション(precautionary)原則の利用に失敗した多くの例があり、それらは深刻で、しばしば取り返しのつかない損害を健康と環境に対して及ぼしている。電磁界が健康に及ぼす可能性のある、潜在的に深刻な脅威を避けるために、現在講じられている、適切で、プレコーションな(precautionary)釣り合いの取れたアクションは、将来の観点からすれば慎重で賢明だと考えられる。プレコーション(precaution)は、EU の環境政策の1つであるということを忘れてはならない。・バイオイニシアチブワーキンググループによれば、現時点での証拠は、限定的ではあるものの、現行の電磁界ばく露限度の科学的根拠に異議を唱えるに足るほど十分に強い。

2)欧州EMF-NET

欧州の第6次枠組みプログラムの下に設置されたEMF-NETは、欧州委員会からバイオイニシアチブ報告に対してコメントを求められました。これを受けて、2007年10月30日付でバイオイニシアチブ報告に対するコメントを発表しました。主な内容は以下の通りです。

バイオイニシアチブ報告のカバーレターには以下が述べられている:各章の情報と結論はその章の著者に責任がある。このことは本報告がワーキンググループのコンセンサスではなく、むしろ多くの科学者やコンサルタントが書いた章を寄せ集めたことを意味している。この報告を誰が計画したか、また取りまとめの資金はどこからか、本質的な問題点などが述べられていない。

セージアソシエイトのセージ(Cindy Sage)女史が「公衆への要約」(一般向け要約および結論に相当)の著者であり、不安を掻き立てるように、また感情的な言葉で書いており、その議論はよく計画された電磁界研究からは科学的な支持はされない。

報告書はバランスが欠けている:著者の声明と結論に一致しない報告書については言及されていない。結果と結論は、電磁界の健康影響問題に対する最近の国内外で行われたレビュー結果の結論と比べ非常に異なっている。

もしこの報告が信じられるものとしたら、電磁界は様々な病気、自覚症状に影響を生じることになる。それらには次のようなものが含まれる: 睡眠不足、頭痛、疲労、皮膚障害と皮膚の刺激反応変化、食欲減退、耳鳴り、記憶力や集中力の欠如、アルツハイマー病とパーキンソン病、心臓疾患、脳や神経系の活動変化、ストレス応答、炎症・アレルギー反応、遺伝毒性的な影響、免疫機能の変化、および多くのがん。国際的に受け入れられている電磁界制限値よりも低いばく露による生物学的影響や健康影響を評価した各国や国際的なレビューではいずれも、十分に受け入れられている国際的なリスク評価手法、およびクライテリアに従って科学文献データベース全体をレビューしたところ、これらの健康への影響は何れも確立されたものとして分類されていない。

3)デンマーク国家健康委員会

デンマ-ク国家健康委員会は、2007年10月4日付で「電磁界と健康に関するバイオイニシアチブグループからの報告」と題してコメントを発表しています。主な内容は以下の通りです(原文はデンマーク語)。

バイオイニシアチブと呼ばれる活動のもとに集結した研究者グループが、610ページからなる報告を最近公開し、科学的研究成果を発表した。レポートの内容は、電気通信設備、送電線、変電所、発電所などの超低周波電磁界へのばく露と、携帯電話、携帯電話基地局アンテナ、デジタルコードレス電話、ワイヤレスコンピュータネットワーク、トランシーバー、テレビ、ラジオ放送などの高周波電磁界へのばく露の両方に関するものである。

小児白血病(白血球のがん)リスクの増加、およびある種の神経系疾患とその他の病気や症状リスクの増加を十分に証明できるという研究者グループの評価を根拠に、研究者グループは、ばく露に対する既存の制限値が十分でないことを示唆している。この報告において、研究者グループは、数百にわたる科学的調査を実施し、多方面の重要分野において再検討を行っている。また、これまでに公表された国民健康調査、生物学的メカニズム、DNA損傷、タンパク質損傷などに関する調査を再検討している。

この報告には、健康に事実上悪影響を与えるさまざまな環境要因について警告する独立した一章が含まれている。健康委員会の見解では、この報告が既存の制限値を変更すべきか否かを決定するのに、科学的根拠ではなくてプレコーションについての議論を何よりも優先しており、この分野における新しいデータの分析を含んでいない。

バイオイニシアチブ報告の研究者および著者の多くは、以前に公の議論において電磁界が健康に悪影響を及ぼし、関係当局が十分な保護レベルを定めていないとする見解を示している。

一般的に、大規模な報告では報告のテーマに対する科学者の基本的な姿勢に関わらず、その分野の専門家による既存の知識を収集するが、今回公表された報告は、通常の大規模報告と比較して、綿密な調査による科学的な質に重点を置いたものではないと健康委員会は判断している。また、科学的調査において起こり得るエラーの原因に関する十分な検討が行われていない。

健康委員会は、この報告について、複数の専門家の評価を得る予定である。しかし現時点では、電磁界へのばく露が健康に及ぼす悪影響について、この報告が健康に関する専門的評価の変更をもたらすものではないとしている。同時に、健康委員会は、新しい技術の到来でしばしば話題になるコードレスシステムの利用における高周波電磁界と健康の問題などに関し、さらなる科学的知識の必要性を認識している。そのため、健康委員会は、携帯電話の使用時における注意事項に対し、コードレスシステムの使用時における高周波電磁界へのばく露を制限する勧告を追加するための科学的情報を収集し始めている。

4)ドイツ連邦放射線防護局(BfS)

ドイツ連邦放射線防護局(BfS)は、2008年の報告書でバイオイニシアチブ報告に対する以下のコメントを公表しています。

研究 欧州と米国の批判的な科学者のグループ、バイオイニシアチブワーキンググループの報告が2007年8月31日に公表された。それ以来、国内外で議論を引き起こした。
結果 バイオイニシアチブワーキンググループによれば、この報告は、携帯電話や無線技術および電力線などから生じる高周波および低周波電磁界の影響に関する約2000編の既存の研究の調査に基づいており、専門家らは、現行の制限値では高周波および低周波電磁界からの健康リスクに対して人々を十分に防護できないので制限値を引き下げる必要があると結論付けている。
論評 バイオイニシアチブワーキンググループの報告は、明らかに科学的欠点がある。特に、専門的には、作用メカニズムは異なっていると認められているが、超低周波電磁界と高周波電磁界の健康影響を混同している。報告が根拠としている研究の大多数は新しいものではない。多くのその根拠の取り上げ方は一方的であり、BfSや国内外の専門家委員会と違った結論となっている。引用されているほとんどの研究は既知のものであり、現行のばく露制限値の設定や国の専門家委員会による定例の評価の際に既に考慮されている。ドイツの携帯電話の研究プログラムの枠組みでも、報告の根拠にある研究を考慮し、全体の評価に取り入れている。

5)オランダ健康評議会

オランダ健康評議会は、2008年9月2日付で、バイオイニシアチブ報告に関する住宅・国土計画・環境省宛の書簡を公表しました。この中で、同報告書に対して以下のような見解を述べています。

本委員会は、バイオイニシアチブ報告の編纂方法、科学的データの選択的利用、及び上述したその他の欠点を考慮して、この報告は現時点の科学的知識を公平でバランスよく反映したものではないとの結論に達した。ゆえにこの報告は、電磁界ばく露のリスクに関する現行の見解を見直すための何らかの根拠を提示するものではない。この報告は、電磁界が生体系に及ぼす如何なる影響も無視すべきではないと論じており、影響とダメージの違いを無視している。以前の発表(例えば、2002年の報告書「携帯電話:健康影響の評価」)に明記しているように、本委員会はこのアプローチに同意しない。

6) オーストラリア高周波生体影響研究センター(ACRBR)オランダ健康評議会

オーストラリア高周波生体影響研究センター(ACRBR)は、2008年12月18日付で、バイオイニシアチブ報告に対する声明を公表しました。この中で、ACRBRは、以下の3つの疑問点を示し、バイオイニシアチブ報告に対する見解を明らかにしています。

  • 疑問点1:バイオイニシアチブ報告の著者らは権威ある国際機関を代表しているか?
  • 疑問点2:バイオイニシアチブ報告の科学的な位置付けは何か?
  • 疑問点3:バイオイニシアチブ報告を信頼すべきか?

これらの疑問に対して、それぞれ以下のようにコメントしています。

疑問1に対しては、しばしば、公衆衛生問題を査定する際、証拠を評価するために組織を立ち上げ、特定の問題について勧告を提示する。この分野における殆どの科学的専門機関(例:世界保健機関(WHO))が採用するモデルは、ある問題についてのレビューと勧告を提示するために独立した専門家を関与させるものである。独立した専門家を関与させるのは、それが該当問題に対する客観的評価の提示を意味するためである。これは、現状の科学的合意とは相容れない強い信念を持った個々人の自薦グループによる提言の成果であるバイオイニシアチブ報告とは全く正反対である。このことは、同グループの目的が当該問題の科学的証拠を提示することではなく、「非電離放射に対する現行の公衆ばく露制限値がもはや公衆衛生の防護のために十分に良いものではない、ということの理由を文書化すること」(バイオイニシアチブ報告第2章の1ページ目)という点に現れている。同様に、上記の標準的モデルは通常、合意に基づく見解を求める。バイオイニシアチブ報告に関しては、カーペンターとセージ両氏による序文に、本書は合意による文書ではなく、個人的見解を集約したものであり、「各章における情報および結論は各章の著者らが責任を負う」(バイオイニシアチブ報告第ⅰ章の1ページ目)とされている。このため、単独でも同報告全体の一部としても刊行されている「一般向けの要約および結論」は、この問題に対するセージ氏の見解として読まれるべきであり、同報告の他の章の著者等が彼女の見解を共有しているということは全く示されていない。このことは、同報告に書かれた内容が無価値であるという意味ではないが、同報告に対しては権威ある独立機関からの同意が得られていないので、同報告の結論の価値を判断するには、同報告の内容そのものを精査する必要がある。

疑問2に対しては、科学では一般に、当該分野の独立した専門家が実施する査読を受けた刊行物と、査読を受けていない刊行物を区別している。その理由は、査読を受けた成果は同分野の独立した科学者がその成果をレビューし、その科学的価値に同意した後にしか刊行されないことで、読者がその刊行物から導かれる結論を信頼することを容易にするためである。逆に、独立した査読を受けていない場合、間違いを修正し、結論が妥当であることを担保する機会はほとんどなくなる。このため、科学者は査読を受けた刊行物を自分たちの主な情報源として扱っているのである。このことは、独立した査読をうけていない刊行物には欠点がある(または、査読を受けた刊行物は完璧である)という意味ではなく、科学者は概して査読を受けるまで刊行物についての判断を留保することが多い、という点に注意を要する。バイオイニシアチブ報告は独立の査読を受けておらず、その結論は科学に対する重要な寄与というよりも、むしろ一部の著者らの見解と見なされるものである。事実、この報告は、どのようなレベルのレビューを実施したかを示しておらず、単に「外部の多くのレビュー実施者が同報告を読み、これをより洗練されたものとした」(バイオイニシアチブ報告第1章の4ページ目)と言及されているだけである。報告の声明および結論の多くは、科学的合意と相容れないので、このことは特に重要である。ゆえに、この不一致がこの報告の間違いによるのか、科学的合意の間違いによるのかをはっきりさせるには、確固たる科学的評価を行うことが必要である。

そのような独立した査読は、通常、(誤解を招く結論が示されているのを避けるため)刊行前に実施されるが、幾つかの非公式な査読がバイオイニシアチブ報告の刊行への対応として実施されている。例えば、オランダ健康評議会(HCN)は最近、この報告における多くの不備を指摘した報告を公表した。そのような不備は通常、査読の過程において対処されるものである。特記すべきこととして、バイオイニシアチブ報告は一貫した原則を適用していないようであり、そのことがこの報告の結論を偏ったものにしている。例えば、電力線の50/60 Hz磁界と乳がんとの関連性を主張する際、この報告はそのような関連性に反する証拠を検討していない。また、電力線の50/60 Hzと小児白血病との関連性を論じる研究では、採用されている別の証拠(貧弱なばく露評価)を除外するための主張を示している。もうひとつの問題は標準的な科学的見解を否定し、この報告で支持されている見解に賛成しなければならない合理的な理由を提示していない。

疑問3に対しては、結局、バイオイニシアチブ報告は科学の前進ではなく、「客観的ではなく、現在の科学的知見の現状をバランスよく反映していない」とするオランダ健康評議会に同意する。単に、バイオイニシアチブ報告は、科学のコンセンサスと一致しないレビューの集まりを提供しているに過ぎず、科学的なコンセンサスに異議を申し立てするのに足るだけの確固たる分析をしていない。

7) 米国電気電子工学会(IEEE)

米国電気電子工学会(IEEE)の中に設けられているCOMARは、2009年保健物理学会誌(Health Physics)でバイオイニシアチブ報告に対するコメントを発表しました。COMARは、世界保健機関からの環境保健クライテリア、欧州委員会におけるSCENIHRなどの報告、バイオイニシアチブ報告などを取り上げ、科学的証拠、その政策への勧告などICNIRP、WHOの扱いとかなり異なっていることを指摘し、バイオイニチアチブ報告の高周波電磁界に関する部分についてのコメントを述べています。バイオイニシアチブ報告の弱い点は、関連する分野での研究文献を選択的に取り上げていることであり、この点についてCOMARは「動物の腫瘍に関する研究」と「遺伝毒性(DNAの損傷)についての研究」の2点についてバイオイニシアチブ報告の問題点を指摘しています。

動物の腫瘍に関する研究:高周波電磁界にばく露された実験動物の腫瘍発達については2つの研究についてコメントしているのみである。そのひとつは、ばく露されたマウスに腫瘍発達の増加が見られるレパコリ(Repacholi)等が行った報告である。その後、この報告をユータリッジ(Utteridge)等が追試を行い、腫瘍発達への影響を見出していない。バイオイニチアチブ報告では、この後者の報告は取り上げていない。二つ目の追試験の結果もユータリッジ等の結果と一致している。このような結果で、バイオイニチアチブ報告は、レパコリの結果を取り上げ、ユータリッジ等の結果は間違っていると退けている。また、バイオイニチアチブ報告では、長期にわたる動物腫瘍研究のレビューを行っておらず殆どを無視している。その結果、バイオイニチアチブ報告は科学的な評価が不完全であり、有害な生物影響ならびに相互作用メカニズムについて支持できない意見を導いている。

遺伝毒性に関する研究:バイオイニチアチブ報告では、ばく露レベルが現存の安全制限値より低い場合を含み、高周波電磁界は遺伝毒性があると見ることができる(DNAを損傷する)と結論付けている。この結論は、他の専門家グループが行った証拠の重み付け評価とは一致していない。バイオイニチアチブ報告は、高周波電磁界にばく露されたラットの脳細胞におけるDNA損傷を報告している結果、ならびにリューディンガー(Rudiger)の研究室からのDNAの損傷についての報告により結論付けている。その後、ライ(Lai)等の実験は他の大学で行われたが、高周波電磁界ばく露によるDNA損傷の増加を示す結果は得られていない。またリューディンガーの結果に対しては、少なくとも公表された報告に用いたデータの幾つかは捏造されていることが指摘されている。多くの動物腫瘍研究を幅広くレビューせずに、僅かな研究に焦点を置いているので、バイオイニシアチブ報告は高周波電磁界ばく露の遺伝毒性について、結論として支持できない結果になっている。

バイオイニシアチブ報告では、国際的に受け入れている高周波電磁界のばく露制限値を低減する明確な理由が示されていないことも弱点であるとCOMARは指摘しています。これらの結果、COMARは、欧州EMF-NET、オランダ健康評議会ならびにオーストラリア高周波生物影響研究センターからのバイオイニシアチブ報告に対するコメント、すなわち、現状の高周波電磁界の生物影響についての科学文献の重み付けからは、バイオイニシアチブグループが勧告している安全の制限値を支持しないという結論に同意しています。したがって、COMARは、政府機関や公衆の健康に関連する人々は政策についてはICNIRPやIEEE/ICESなどの機関が勧告している高周波電磁界の安全の制限値に基づく政策を継続することを推奨しています。

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