IH調理器は、ガスや火を使用せず、電気のみで加熱させる調理器です。IH(Induction Heating)と呼ばれる誘導加熱の仕組みを利用し調理を行うため、室内の空気を汚さないことや火災の発生の可能性を減らすことができるなどのメリットがあります。

コンロ型のIH調理器具をイメージされる方が多いですが、他にもIH炊飯器など同じ加熱原理を利用する機器も販売されています。

IH調理器の種類

コンロ型のIH調理器には、「鉄・ステンレス加熱タイプ」と「オールメタル加熱タイプ」があります。「オールメタル加熱タイプ」は多種な金属に対応するため、「鉄・ステンレス加熱タイプ」に比べて使用する磁界周波数は高くなります。下表は使える鍋と使えない鍋の一例です。詳しくは各製品のウェブサイトや取扱説明書をご確認下さい。

IH調理器の種類と使用できる鍋

鍋の種類 鉄・ステンレス
加熱タイプ
オールメタル
加熱タイプ
鉄・鉄鋳物・鉄ホーロー
ステンレス 一層鍋
多層鍋 鍋底に磁石が付く
鍋底に磁石が付かない ×
アルミ・銅 ×
ガラス・陶磁器・直火用焼網 × ×
底が平坦でないもの(中華鍋、足つき鍋など) × ×

誘導加熱の仕組み

IH調理器の天板の下に配置されているコイルに周波数20kHz(キロヘルツ)~90kHzの中間周波交流電流を流すと、コイルの中心から磁力線が発生します。その磁力線によって、金属製の鍋やフライパンなどの鍋底にうず電流が発生し、鍋などが持つ電気抵抗で鍋そのものが発熱して、中身が加熱される仕組みです。

サンプル

IH調理器から発生する磁界の大きさ

サンプル

電磁界ばく露から人を防護するために作成されている国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)が推奨する、IH調理器から発生する20k~90kHzの国際的なガイドラインのばく露制限値は、27µT(マイクロテスラ)です。

電磁界情報センターでは、家庭で使用するIH調理器、卓上IH調理器、IH炊飯器の3つの機器から発生する電磁波(磁界)の強さを、国際的な測定規格(IEC62233)に従って測定しました。その結果、ガイドラインの制限値より低いことが確認されています。

IH調理器から発生する磁界の人への影響

科学的に立証されている影響(短期的ばく露影響)については、IH調理器使用時の約千倍以上の非常に強い磁界にさらされた場合には、電磁誘導と呼ばれる現象の影響で、神経や筋肉の活動が妨げられることがあります。また、さらに強い磁界では、心臓の働きに影響を与えることがわかっています。

科学的に立証されていない影響(長期的ばく露影響)については、世界的にIH調理器に用いられる中間周波電磁界に関する研究データは、低周波電磁界高周波電磁界に関するものに比べ少ないため、さらなる研究が必要とされていますが、現在までのところ健康に影響があるという科学的根拠のある報告はありません。また、妊娠中の方で、IH調理器の使用を不安に思う方がいます。国内では、胎児流産や早産、胎児の奇形を引き起こすなどの影響はないか、発がん性はないかなど、これまで多角的に研究が行われてきましたが、いずれの研究でも、妊婦および胎児に影響があるという結果は得られていません。

もう少し詳しく知りたい方はこちら

IH調理器の使用が心配な方へ

鍋底が小さい鍋や鍋の位置がヒーター部の中心からずれているとIH調理器から漏れる磁界は大きくなります。一方、メーカーが推奨する大きさの鍋や使用方法を守れば漏れる磁界は小さくなります。どうしても電磁波が気になる方は、メーカーの取り扱い説明書をよく読んで、正しい使い方をするのが大切です。

なお、スイス連邦内務省公衆衛生局(FOPH)の「EMFファクトシート電磁調理器」には、IH調理器の使用に際して不必要な磁界を浴びない方法など、以下の注意事項が記載されています。どうしても心配な方は参考にされてはいかがでしょうか。

  • 調理ゾーンのサイズに合った大きさの鍋を使用する。
  • 常に、調理ゾーンの真ん中に鍋を置く。
  • ゆがみのある傷んだ鍋や丸みのある鍋底のものを使用しない。
  • 製造者により電磁調理器適合ラベルが表示されている。最も使用に適した鍋は、その電磁調理器と一緒に販売されている鍋である。
  • 磁界のばく露は、電磁調理器から5~10センチメートルの距離をとることで大幅に低減できる。
  • 鍋からの電流(コンタクト電流)による感電や熱傷を回避するために、金属製の調理用スプーンは使用しない。
  • 心臓ペースメーカ植込み型除細動器を装着した人は、主治医に相談すべきである。

規制関連

IH 調理器の電磁界の大きさについては、電波法施行規則に規定があります。

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