オーストラリア放射線防護・原子力安全庁(ARPANSA)が2018-19年の年次報告を発表

2020.1.30掲載

オーストラリア放射線防護・原子力安全庁(ARPANSA)は、2018-19年の年次報告を発表しました。

電磁界に関する項目としては、「ケーススタディ3:携帯電話使用と脳腫瘍研究」と題して、次のように述べられています。

「医学誌British Medical Journal Openは2019年1月、携帯電話使用と脳腫瘍の発症率を調べたARPANSAによる研究を掲載しました。
ウォロンゴン大学、モナッシュ大学、オークランド大学と共同で実施したこの研究は、1982~2013年の期間に診断された神経膠腫、神経膠芽腫、髄膜腫を含む、異なるタイプの成人の脳腫瘍の発生率に着目しました。16825例の脳腫瘍を、オーストラリアにおける携帯電話加入データと比較しました。

この研究では以下のことがわかりました。

  • 脳腫瘍全体の発生率は当該期間を通じて安定したままで、オーストラリアにおける携帯電話使用の増加と比較しても増加は見られませんでした。
  • 1993~2002年の期間に神経膠芽腫の増加がありましたが、これは磁気共鳴画像撮影(MRI)技術の進歩に伴う、より優れた診断技法に起因するものでした。
  • 2003年以降、携帯電話使用は急激に増加していますが、2003-2013年の10年間には、いずれのタイプの脳腫瘍の増加もありませんでした。
  • 特に、2003年以降、携帯電話使用時に最もばく露される部位である側頭葉での脳腫瘍の増加はありませんでした。
  • 仮に、一部の研究で報告されている携帯電話使用と脳腫瘍との関連が正しかったならば、脳腫瘍発生率は観察されているものよりも高くなっていたはずです。

携帯電話端末は低出力の電波送信装置を用いており、これは通信のために無線周波(RF)の電磁エネルギーを放射します。携帯電話使用時に脳がばく露されるRF放射のレベルからの潜在的な健康影響、特に脳腫瘍について、懸念が生じています。脳腫瘍の症例群と健康な対照群の携帯電話使用を比較した一部の先行研究では、携帯電話のヘビーユーズと脳腫瘍との弱い関連が見られています。主にこの限定的な証拠に基づき、国際がん研究機関(IARC)はRF電磁界を「ヒトに対して発がん性があるかも知れない」と分類しました。

今回の最新研究の結果は、携帯電話使用が脳腫瘍の原因となるという確立された証拠はないという、ARPANSAの現時点での助言と一致するものです。」

この年次報告書の「ケーススタディ3」の原文は、以下のURLから入手可能です。
https://www.transparency.gov.au/annual-reports/australian-radiation-protection-and-nuclear-safety-agency/reporting-year/2018-2019-20

関連情報:
「オーストラリア放射線防護・原子力安全庁(ARPANSA)が『全ての年齢グループで携帯電話と脳腫瘍との関連なし』とする分析結果を発表」(2019.9.17掲載)
https://www.jeic-emf.jp/academic/info/12185.html

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